「週末は必ず、朝から晩まで雀卓（じゃんたく）を囲んでいる」。そんな両親の影響か、小さい頃から勝負事が好きだった。６歳の時、町のオセロ大会でうっかり準優勝すると、これを才能と、全力で勘違いした親が、私をほいほいと囲碁教室に放り込んだ。最初は、大人たちにちやほやされることが快感で、そろそろ億劫（おっくう）になるピアノの基礎練習をサボる、いい口実でもあった。
それが１０歳で日本棋院の院生になると、状況は一変する。石を投げれば天才と秀才に当たりまくる集団に、どこまでも平凡な私が紛れ込んだのだ。すぐに「ヤバイ」と気付いたが、やめたいとも言い出せない。ずるずると流され、私の「負け人生」が始まった。
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