無理をし過ぎた。力が入りすぎた。空回りして結果が出ない。そんなことが続くと辛(つら)くなり徐々に心も離れていく。これはピアノを学ぶ者がおちいりやすい奏法の問題だ。私のところには手を痛めた奏者がよく相談にくる。そのようなこともあり、学生や指導者のためにピアノ演奏法に関する書籍を準備しているところだ。
大正時代の音楽評論家で兼常清佐氏は「万年筆の軸で鍵盤をおすのと、名ピアニストのタッチに差はない」といった発言で物議を醸した。これは冷静に考えると弾き手の話をしていて、楽器の特性を活(い)かすといった事には触れられていない。
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