演奏会の本番が好きだ。還暦を過ぎた今、この気持ちに迷いはない。調子のよい時、悪い時はあるがありのままの自分を感じる。
ピアノを学ぶためポーランドに留学して最初の冬、お年寄りの方々相手に演奏する機会があった。最初の下宿で大家さんとうまくいかず悩んでいた時期で、コンサート本番ではかえって演奏する曲に集中できたのかもしれない。ショパンのノクターンを演奏し終え、最後の音を消え入るように終えた後しばらくして静かなる大波のような拍手を頂き、それはなかなか終わらなかった。コンサートではその後、いろいろな経験をさせていただいたが、原点はあのコンサートだったかもしれない。
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