米マサチューセッツ工科大学(MIT)で金属工学を学ぶ学生向けの講演とワークショップを依頼され、昨年2月、ボストンに向かった。折しも新型コロナウイルスが広がり始めたころだ。空港の荷物検査では鍛冶道具の金鎚(かなづち)と大量の鉄材が不審に思われたのか、説明に手間取った。
講演当日、大講義室で100人を超す学生・研究者の前で火箸とお鈴の音色を響かせた。会場は静寂な雰囲気に包まれ、明珍家の歴史や伝統工芸の手業を続ける大切さを訴えた。講演後には私の周りに学生たちが数十人集まり、「どうすれば心地良い音色が生まれるのか」「何年修業すれば火箸鍛冶になれるのか」と質問が相次いだ。中には「弟子入り希望」といううれしい声もあった。
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