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(4)新住民 地域活動 担い手少なく
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囲いがなく、開放的な高木公園=西宮市高木東町(撮影・田中靖浩)
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囲いがなく、開放的な高木公園=西宮市高木東町(撮影・田中靖浩)

囲いがなく、開放的な高木公園=西宮市高木東町(撮影・田中靖浩)

囲いがなく、開放的な高木公園=西宮市高木東町(撮影・田中靖浩)

 小学生の歓声。ドッジボール、野球、縄跳び。思い思いに駆け回っている。隅の遊具で幼児が遊び、見守る母親たちが、おしゃべりに花を咲かせていた。

 新しい住宅が立ち並ぶ阪急西宮北口駅(兵庫県西宮市)の北東地区。駅から北東へ約1・7キロにある高木公園(同市高木東町)は、周囲とを隔てる柵が無い=写真。1ヘクタールの憩いの場は、芝生がはげるほど利用される人気スポットだ。付近には「公園間近」をPRして売り出されたマンションもある。

 9年前に引っ越してきた近所の主婦大沢ひろみさん(44)は、交通の便がいいことに加え、公園のある街の環境を気に入っている。

 「開放的。公園があるため、駅に近いのに、のんびりとした雰囲気がある」

    ◆

 北東地区は、かつては古い住宅が密集し、畑も広がっていた。

 街が様相を変えるきっかけになったのは、阪神・淡路大震災だ。約半数の住宅が全半壊するなどし、57人の犠牲者が出た。復興を託して、一帯31・2ヘクタールを対象に「西宮駅北東震災復興土地区画整理事業」が施行され、2008年10月に完成した。

 復興のシンボルが高木公園だった。それまで地域には公園や緑地が無かった。震災直後、北口・高木まちづくり協議会の事務局長として奔走し1年たたず、病気で亡くなった福井耕司さん=当時(48)=は「子どもが安心して遊べるええ公園を造るんや」と計画に力を入れた。

 遺志を継いだまち協は、隣接する高木小学校と一体化した「スクールパーク」をイメージ。「皆で維持し、育てていく」をコンセプトに据えた。公園は、地域の催し会場として定着し、震災前から住む旧住民にも、転居してきた新住民にも愛される場所になった。

    ◆

 この公園を快適に保つため、管理運営委員会がある。大沢さんは4年前、委員を引き受けた。中高生になった娘2人が小学生のころ、公園でよく遊んでいたためだ。「お世話になったし、幼い子がいるお母さんのためにも」と月1回、ごみや防犯への対処を話し合い、清掃に励んできた。地域のまつりで裏方も務める。

 ただ、気がかりなことがある。大沢さんは、委員会で若手が担当する会計をしているが、後任がまだ見つからない。

 人気住宅地となった北東地区。一昨年秋、近くに大型商業施設「阪急西宮ガーデンズ」がオープンし、ますます人気は高まる。転入者が増えたが、新住民には地域活動に熱心な人が必ずしも多くない。実際、公園管理運営委員の大半は、震災前から暮らす人たちだ。

 神戸新聞社が、同地区で実施したアンケートでは、新住民の地区への満足度は「満足」「どちらかといえば満足」が計96・5%。「復興したと思うか」との問いには「すごく」「ある程度」との答えが計84・5%と、非常に高い。

 地域への高い満足感。一方で、コミュニティーに関心の薄い現実がある。「公園は快適なだけでなく、貯水槽を備え防災機能もある。だから、地域全体で管理したい」。大沢さんの切なる願いだ。(記事・上杉順子、写真・田中靖浩)

2010/1/15
 

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