連載・特集 連載・特集 プレミアムボックス

(5)マンモス会議 住民結束し「もの申す」
  • 印刷

 芦屋市南部の埋め立て地・芦屋浜シーサイドタウン。中高層住宅や一戸建てが広がる緑豊かな街並みに約五千五百世帯が暮らす。「芦屋浜復興会議」は全世帯の九割以上を網羅する。

 先月十八日、同会議のもとに兵庫県から一通の回答が届いた。「国の基準に基づき適正に施工された。震災は想定をはるかに超す大震災で、補償の法的責任はない」と記されていた。

 シーサイドタウンは、地盤の液状化で大半の家が傾いた。同会議は埋め立てた県などに一戸五百万円の補償などを求めた。回答は「拒否」ではあったが、事務局を担当する田中八郎さん(58)は、まだこれからというふうに話した。

 「だんまりを決め込んできた県が回答を示したのは半歩前進。今後の交渉材料になる」

    ◆

 被災地で最大の住民団体「復興会議」は、震災一カ月後に発足した。

 高層住宅は建物の亀裂、一戸建てや棟続きのタウンハウスは液状化による傾斜、と住宅ごとに被害は異なる。だが、まとまって復旧や救済に当たることが必要ではないかと、自治連合会を母体に三十一もの自治会、管理組合が加わった。

 住民の声は自治会長、組合理事長を通し、復興会議役員約十人が月二回集う代表者会議にかけられ、全体の取り組みが始まる。田中さんは「行政にもの申すにはまず結束。次に粘り強く運動を続けること」と話す。

 タウンハウスの管理組合理事長だった井田忠治さん(63)も「数の力」を痛感した一人だ。

 震災復旧で「私道」には県の補助制度があるが、タウンハウス前の道は「通路」に当たると対象外になった。震災直後から県や市に要望に回ったが、市は「実現の方向で考えている」と話すにとどまり、県からは返答すらなかった。

 この要望が、復興会議が提出する陳情や請願に盛り込まれると、特例として適用が決まった。「実現まで一年かかったが、小さな管理組合の要求のままならどうなったか」と井田さんは振り返る。

 地元市議六人は「シーサイド議員」と呼ばれる。共産、公明など所属会派は異なるが、復興会議の代表者会議には顔を出す。液状化対策の請願に、全員の名前が並ぶ。

 「署名運動やデモ行進など、とにかく行動的。頼もしく時に脅威すら感じる」と元行政マンで、震災後に初当選した来田守市議(65)。「会議をウオッチングしておかなければ、活動ができない。結束の背景には、街そのものの歴史もある」と松木義昭市議(50)は言う。

 街開きして十八年。入居当時、住民は県と芦屋市の対立に巻き込まれ、学校開校が危ぶまれた苦い経験がある。南を走る阪神高速湾岸線開通の際には、トンネル型の防音壁設置を勝ち取っている。

    ◆

 液状化問題で、県が三千万円を投じて実施した地盤のボーリング調査は、住民が求めたものだった。調査報告書は「埋め立てを海砂で行った部分が大きく動いている。山土部分の動きは少ない」と、分析したが、対応には触れなかった。

 補償要求の今後について復興会議議長で弁護士の川西譲さん(56)は「責任を否定するなら、県は造成時の地質調査データなどを明らかにすべきだ」と交渉の糸口を模索する。代表者会議は今月十日すぎにも開かれる。

1997/1/7
 

天気(9月9日)

  • 33℃
  • 27℃
  • 30%

  • 34℃
  • 24℃
  • 40%

  • 35℃
  • 28℃
  • 20%

  • 35℃
  • 26℃
  • 20%

お知らせ