薬膳(やくぜん)というと何か特別な食事と思っている人が多いかもしれません。実は普段の食事でも十分できます。中国3千年の歴史で培われた知恵を、健康長寿に生かす方法をアドバイスしたいと思います。
忙しいなどの理由で、食事をコンビニで買って済ませることがあると思います。選ぶポイントがあります。
まずはご飯。しっかりかんで食べれば、内臓を動かし、元気のもとを吸収できます。それからみそ汁。みそなどの発酵食品には老化を防ぎ、免疫力を高める抗酸化作用があります。お米やお豆など「お」の付く食べ物は大切です。
それと何か1品。例えばサケはどうでしょうか。血を造ったり、疲れを取ったりする働きがあります。これだけでも立派な薬膳なのです。
私はもともと体が弱くて、胃潰瘍、メニエール病などいろんな病気になりました。一番つらかったのは32歳のときの子宮内膜症でした。
腹痛がひどくて1カ月のうち起きられるのは1週間程度。手術も難しく「治療法はない」と言われました。
わらにもすがる思いで、漢方薬治療をする医院を受診しました。女性医師は「3年かかるけれど治りますよ」。血の巡りを良くする煎じ薬を飲み続け、本当に完治しました。
使っている薬のことを知りたいと思い、大阪の漢方スクールに通いました。局所の治療ではなく、体全体のバランスを整える考え方に納得しました。8年前、漢方のノウハウを普段の食事に生かせる薬膳スクールを始め、国際薬膳調理師の資格も取りました。
ぜひ覚えていただきたいのは、食べ物には体を温める物と冷やす物があることです。暑い夏に体を冷やすトマトやキュウリを食べると、熱中症予防になります。体を温める物には、エビやショウガなどがあります。ヨモギもおなかをすごく温めてくれます。一方で、朝食によく食べるバナナは体を冷やすので、冷え性の人は要注意です。
シニア世代は命の源となる「腎」の機能を高める食べ物を取ってください。尿のトラブルを改善し、足腰を強くします。黒豆や黒米、黒キクラゲなど色の黒い物が代表的です。
旬(しゅん)の物を食べるのも大切。人間も自然の一部ですから、季節の食材を取るのは理にかなっています。ぜひ八百屋や魚屋さんで求めてください。
薬膳のお茶もお勧めです。多くの種類があり、特長もさまざまなので試してみてください。(聞き手・田中伸明)
【いけだ・のりこ】1971年神戸市西区生まれ。システム開発会社を経て、薬日本堂漢方スクール大阪校で学び、咲美堂(しょうびどう)漢方薬房(TEL078・381・5665)を開業。同市垂水区在住。
池田さんが勧める三つの作法
一、お米、お豆など「お」の付く食べ物を重視
一、体を冷やす食べ物、温める食べ物を意識する
一、「腎」の機能を高める黒い食べ物を食卓に
国際薬膳調理師
中国政府直轄の中国中医薬研究促進会が認定する上級資格。日本でも受験可能だが、薬膳アドバイザーと薬膳インストラクターの資格取得が条件。合格者は薬膳スクールの講師を務めたり、薬膳料理教室を開いたりしている。