IoTことはじめ
(9)IOTを実現するための地道な作業
ある日、私が出社をすると、センサーを開発しているチームの社員が、痛そうに腕に包帯を巻いているのを見ました。理由を聞くと、あるタンクの残量を数カ月間、検知するため、タンクの蓋に着けるセンサーが落下してしまわないよう、蓋を数千回も手で開閉して耐久試験をしたそうです。実験がうまくいくよう、開発チームのメンバーが自ら汗をかいて、センサーの設置試験をしたというわけです。“IoTを活用したスマートなソリューション”というと、クリエイティブで綺麗な仕事に聞こえますが、実際には地道な作業が必要です。センサーを使って作業を自動化するということは、人の手を介さずに、過酷な環境に十分耐えられるものでなければならないのです。
また、私のチームに大峯氏というドローンのサービス開発を進めているメンバーがいました。彼は勉強熱心なマネージャーで、開発チーム全員にドローンのパイロット訓練を受けてさせていました。私も誘われてパイロットの研修を受けましたたが、思いがけず、そこには沢山の発見がありました。ドローンの技術はSF映画で見たような夢を実現してくれるものだと思っていましたが、現実はとてもシビアでした。実際にドローンで作業するためには航空法をはじめとした多くの法的知識が必要であり、ビジネスモデルを考える上でも多くの知識を習得しなければなりませんでした。 また、実際に飛行させてみて分かったのですが、機種は多種多様で、電池の消耗や、飛行の癖、ルート設定等が機種によってかなり異なるのです。われわれはインフラやプラントの設備点検を中心にドローン・ビジネスを開発しようとしていましたが、橋梁や鉄塔のケーブルの点検といっても、その用途に見合った機種選定とチューンナップが必要であり、自分でパイロットをやってみてはじめて機種やシステムの目利きができるようになるのだと実感しました。何事にも自分達でトライして、知見を高めていく大峯氏の姿勢に深く感心しました。
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