IoTことはじめ
(6)5Gの出現 ~良いパートナーを探す~
当社のローカル5Gへの検討着手がニュースになった2019年当時、私のチームは問い合わせの電話やメールが殺到する事態となりました。それだけ世の中の5G(第5世代移動通信システム)への関心が高かったのだと思います。対応に追われた私とチームメイトの山本氏は、対応方針として「単なる技術の紹介にならないこと」を心に決めていました。理由は、問い合わせた相手が「なぜ5Gに興味を持ったのか」という点に重要なニーズが隠れていると思ったからです。また、私たちは港や工場で利用されている海外の事例から「広大な敷地で、たくさんのモノや端末の制御が必要となる場所で、光ファイバーなどの有線通信が敷設しにくい場所」に、ローカル5Gのニーズがあるとの仮説を持っていました。多くの問い合わせを受け、西日本エリアのさまざまな地域や企業を訪問しながら、仮説を磨いていきました。多くのお客さまとお話しすることで、仮説はぼんやりとしたものから、次第にくっきりとした確信のあるものに変わっていきました。
既に多くの工場ではIoTが導入され、機械の振動や故障をモニタリングしていましたが、情報量の少ないセンサーなどのデータが主流でした。従来の無線では大容量の伝送ができず、遅延も発生するからです。また、工場はラインをフレキシブルに変更することが求められるため、有線を張り巡らせる通信は不都合ですし、安全面を考えても最適ではありません。もし工場に5Gを導入したら、多くのセンサーとの通信をカバーできるだけでなく、Wi-Fiでは実現できなかったモビリティ(輸送機器)の制御や、4K、8Kなどの高精細な映像通信が可能となり、今までにないスマートなファクトリーを実現できるのではないかと考えました。少ない人数で工場を稼働させながら生産性を飛躍的に向上させ、新しい価値を生むイノベーションができると思ったのです。
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