ひょうご経済プラスTOP 連載一覧 コラム けいざいeyes 街を仕掛ける-新進建築家の公共空間考 (13)新さんきたアモーレ広場が完成するまで(上)

街を仕掛ける-新進建築家の公共空間考

(13)新さんきたアモーレ広場が完成するまで(上)

2021.07.28
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 2019年冬、ニューヨークでのビザの期限が迫っていた中で、神戸市主催のとあるコンペをインターネットで見つけました。小さい頃から縁のある三宮駅前の広場のコンペです。当時、公共空間という不特定多数の人が利用する場の新しい在り方を、ニューヨークの建築事務所で模索していました。そして、1年間の文化庁派遣員としての修業を終え、何かアウトプットをすることで、成長した自分の実力を試したい気持ちがその時にあったのです。コンペの対象となった広場は通称パイ山と呼ばれ、神戸市民の私には馴染み深い場所であったこともあり、そのコンペに挑戦することにしました。

 まず初めに「公共空間はどうあれば良いのだろう」と自問自答する日々が続きました。住宅やレストラン、図書館や美術館など、名称を聞けば、何をするための場所なのか想像できるのが通常の建物の特徴です。しかし「広場」と聞いて、その場所で何をするか目的がハッキリわかる人は少ないのではないか、と思いました。また、どの年齢層の方が多く訪れるのか、滞在時間はどのくらいなのか、なども分からりません。広場には不特定要素が多すぎて、むしろ決まっていることが何もないのではないか、と考えるようになりました。

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