街を仕掛ける-新進建築家の公共空間考
(11)感性実験都市(下)~都市を介して世界の人々と会話をする術を探して~
2019年、日本へ帰国したある日、神戸・三宮の「三宮本通商店街振興組合」の方から突然連絡が入り、関わりを持ち始めるようになりました。「でこぼこ広場」と親しまれた阪急神戸三宮駅北側「さんきたアモーレ広場」を神戸市が改修するにあたってのデザインコンペで、私の作品が採用されたのをご存じでした。今まで行ってきた活動内容を伝えると「ニューヨークでの都市実験をこの商店街で是非してほしい!」との依頼を受けたのです。こんな有難いことはないと、すぐにコラボレーターの中川直美さんに伝え、実行に移しました。
同商店街は三宮センター街のすぐ南に位置し、通りは150メートルになります。ニューヨークで実施した時に比べ、規模は6倍になり、さまざまな検証ができるようになりました。まずは、風船の配置です。あらかじめコンピューター上でシミュレーションし、人の流れを自動で計算することで、最も人が分散して流れる風船の配置を考案しました。風船の数は150個。風船と風船との距離が狭くなったり、広くなったりしてしまうと、私たち設計者が人の行動を制御してしまう。都市実験のもともとのコンセプトである「個々の異なる感性がそのまま引き出される公共空間」を実現するように、設計者の意図ではなく、歩行者の感性によって行動が生み出されるには、どのような風船の配置が相応しいのかをスタディしました。
この記事は会員限定です。新聞購読者は会員登録だけで続きをお読みいただけます。