国連が創設80年を迎えた。おびただしい犠牲者を出した第1次、第2次世界大戦の教訓から、国際社会の平和と安全を維持する目的で発足したが、機能不全があらわになっている。紛争の解決能力を高める抜本改革を進めねばならない。
米英仏中ロ5カ国の常任理事国と非常任10カ国で構成する国連安全保障理事会(安保理)の迷走が行き詰まりの要因だ。近年、拒否権を持つ常任理事国が国際協調を軽視し、自国の利益追求に走る局面が目立つようになった。
2022年2月に始まったロシアのウクライナ侵攻は明確な国連憲章違反だが、即時撤退などを求める安保理決議案がロシアの拒否権行使で否決され続けている。
23年10月から続くパレスチナ自治区ガザの戦闘では、侵攻を続けるイスラエルの後ろ盾である米国が、人道危機の深刻化にもかかわらず停戦決議案に拒否権を発動し続け、人道支援すら滞らせている。
1990年にイラクがクウェートに侵攻した際、多国籍軍を派遣してイラク軍を撤退させた安保理の結束は今や見る影もない。常任理事国同士の対立により、国際法に違反する蛮行がまかり通る現状は断じて許されない。国連の機能回復には安保理の改革が不可欠である。
日本やドイツなどは常任理事国の拡大を提唱している。全常任理事国の合意が必要なため容易ではないが、紛争などに対応できる体制の必要性を粘り強く訴えてほしい。インドやブラジルなど発言力を増す新興・途上国「グローバルサウス」とも連携し、機能回復を求める国際世論を喚起することが重要だ。
国連創設を主導した米国が組織の弱体化を招いている側面もある。トランプ大統領は国連に代わって自国が紛争を解決していると主張し、国連批判を繰り広げる。しかし、力による平和は覇権主義をまん延させかねない。
トランプ氏は地球温暖化や感染症対策などの国際的な対応が求められる課題に背を向け、国連への拠出金を大幅に削減した。さらには核兵器の実験の再開も打ち出した。国連の努力を踏みにじる暴挙であり、強く抗議する。
ただ、批判にはうなずける点もある。国連本部は肥大化し、組織の重複や経費の無駄遣いが指摘される。改革を断行して組織の効率性を高め、米国の国連回帰を促すべきだ。
日本に求められるのは、国連主導の多国間協調の重要性を説き、「法の支配」に基づいて他国との連携を進めることである。国際社会からの信用をさらに高め、長年の目標である常任理事国入りを実現させたい。
























