スマートフォンの国内普及率は9割に達し、誰もが交流サイト(SNS)に親しむようになった。表現の自由をかつてないほど身近なものにしたSNSは、誹謗(ひぼう)中傷や偽情報などの問題をはらみつつ、選挙に大きく影響するまでに成長した。世界的なIT企業が仕切る現代の言論空間とどう向き合えばよいか。慶応義塾大学の水谷瑛嗣郎准教授(メディア法)に聞いた。(聞き手・那谷享平)
-SNSを「手のひらの上の表現の自由」と呼んでいる。
「SNSのルールを決めるのは、運営者であるグーグルなどのプラットフォーム事業者(PF)だ。SNSには一般ユーザーだけでなく、国や自治体、政治家、報道機関の公式アカウントまであるが、SNSを利用し続けられるかどうかはPFの判断次第だ」
「例えば、過去には米国のトランプ大統領ですらツイッター(現X)のアカウントを停止された。PFには情報流通に対する強大な支配力がある。国家とは別の新たな統治者とも呼ばれるゆえんだ。現代の私たちの表現の自由は(スマートフォンという手のひらの上の端末にあると同時に)巨大企業の手のひらの上にある」
-兵庫県知事選でも、稲村和美氏の後援会が選挙中にXの公式アカウントを凍結された。