昨年の兵庫県知事選では交流サイト(SNS)や動画投稿サイトといったソーシャルメディアが投票行動に影響し、有権者がこれらの情報と向き合う能力(リテラシー)が問われた。メディアリテラシーを専門とする関西学院大(西宮市)の山中速人名誉教授(71)は「県知事選の混乱は新しいメディアが社会に入るといつか起こる問題だった。特効薬はなく、地道なリテラシー教育が必要になる」と指摘する。(聞き手・田中宏樹)
-県知事選ではさまざまな情報や動画が拡散した。
「候補者の人柄や政策の紹介のほか、陰謀論を訴えたり、誰かを中傷したりする動画も広がった。もし、再選された斎藤元彦知事の支持者に戦略があったとすれば、元県民局長の告発文書に記された疑惑を投票の判断基準にさせないことだったと思う。『マスコミはデマを流している』などと情報をかく乱し、有権者から疑惑問題を遠ざける狙いがあったと考えられる」
「発信者側は、ハッシュタグ(検索目印)やSNSを駆使して動画の再生数を増やす方法を知っている。でも、受け手のSNSなどの情報に対するリテラシーは不十分だった。スマートフォンやタブレットで日常的にソーシャルメディアに触れる30~40代など、現役世代に対して特にその課題を感じる」
-それはなぜか。