長く生きてきた。毎年、親友が他界し、共有した時間が消えていく。自分も昨夏コロナで重症化し、死の淵に立った。譫妄(せんもう)の中で夢と現実の境目をワープした。『神曲』の地獄めぐりだ。我々はこうして家族や友人の死、個体としての死と対面する。だが、我々を載せるこの途方もない方舟(はこぶね)=地球も死と対峙(たいじ)する。気候変動、化学物質による汚染、パンデミック、水や資源の枯渇、洪水に日照り、種の絶滅、山火事にと連関しながら同時多発的に表れつつある。
廃園になった保育園跡地でコオロギ園をやっている。ウオールデン湖の森に住み着いたヘンリー・ソローの『森の生活』のように。草が生えるままの園庭には、白いマーガレットが風に揺れている。しかし、子どもたちの笑い声はもうない。だがここには絶滅危惧種IAのタガメが残っている。ここでの絶滅は、即(すなわ)ち日本からの絶滅だ。何とかしなければ。生存には里山の存在ときれいな水が必要だ。水については調べた。内分泌攪乱(かくらん)物質が生殖サイクルを攪乱する。全国的に水棲(すいせい)昆虫が姿を消した理由は、これだ。その上、ミクロと、ナノプラスチックの猛爆がある。日本人は毎週、クレジットカード1枚分を体に取り込んでいるらしい。海ガメや魚はもっとだ。海辺では、貝殻が減っている。生物の絶滅が進んでいるのだ。地球全体では昆虫の減り方が著しい。
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