最近、「発達障害」にからむ労働相談が増えている。職場のペースにうまくなじめないために、いじめを受けているという相談が典型だ。発達障害とは一般的に、能力の発達に偏りがあることをいい、個々に合わせ仕事のペースややり方を変えれば職場に適応できるといわれる。国も法律で企業に障害を持つ労働者への合理的配慮や、一定比率以上の障害者を雇用することを義務付けており、そこには精神障害を持つ労働者も含まれる。このような動きはもちろん歓迎すべきであり、障害を持つ人々への配慮はもっと進んでほしい。
ところが、現実には発達障害の診断を得て職場の理解を求めたことで、かえっていじめが深刻になったという相談もある。また、障害者であることを理由にほかの労働者から職場を隔離されたり、労働条件を低く固定されてしまうこともある。「障害者」であることを受け入れることで、かえって差別される側面もあるのが現実だ。だから、医療機関で診断を受け、障害者としての配慮を求めることを躊躇(ちゅうちょ)する人もいる。
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