2018年7月11日に神戸新開地喜楽館がオープンしたことは記憶に新しいかと思います。神戸で生まれ育った噺家(はなしか)の私にとっても、喜楽館の開場はとても楽しみでしたし、早くその舞台に立って両親を招待したいと思っていました。
ところが、私の母はその前年の夏に大腸がんのステージ4を患っており、入院していました。病院にお見舞いに行った際、「来年の7月に神戸に寄席ができるよ、名前は公募で喜楽館に決まった」と言うと、母は「新開地なら近いから、アンタが出てたらすぐに観(み)に行けるね、それまで長生きせなね」と答えました。ですが、医師によると母の余命は半年らしく、喜楽館ができるのは1年後でしたので、その夢は叶(かな)わないだろうなと思っていました。
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