「読みたいと思う本がない」「買いたいと思う雑誌がなくなった」と言われることがある。本屋の店頭には少し前まで「嫌韓本」「嫌中本」といわれる、いわゆるヘイト本が平積みされていた。「どうして、ああいう本を作るのか」という批判を含んだ問いを受けることも多々あった。私もこうした本が量産される風潮を嘆くひとりだ。
だが、「どうして」という問いには明確に答えることができる。「売れるから」だ。売れる本を出版社は出したいと思っている。買う人が多ければ、その層に向けて本や雑誌の誌面を作ろうとする。商業の世界の常である。川の上流に作家や編集者がいて桃ならぬ作品を流し、川の下流でそれを受け取るのが本屋や読者であると、一般には思われているのかもしれない。だが、この川は環となっているのだ。
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