赤とんぼが飛び交い秋が来たことを教えてくれる。東京のマンションから夕焼けを見るたびに故郷たつの市の揖保川の向こうに沈む夕日を思い出す。
詩人三木露風が「赤蜻蛉(あかとんぼ)」を発表して今年で100年。原風景は幼くして別れた母の存在と故郷の風景にある。5歳で別離に沈んでいたとき、鶏籠山(けいろうざん)や揖保川に心癒やされたという。背中の温(ぬく)もりを感じながら見た夕焼け。深紅の空を真っすぐ横切る赤とんぼ。ポツンと竿(さお)の先に止まる様子に孤独な自分を重ね合わせたのだろうか。
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