戦争のことを考える時期になると、とある作家さんが言ったことを思い出す。戦隊に同行する芸術家は、まず音楽家が先頭に立っていく。戦隊の前にラッパを持って人々の士気を上げる。その後ろ、隊の進行と寄り添うようにして従軍画家や写真家、映画の撮影者などが帯同して、その様子を臨場感たっぷりに記録する。文章書きというのはその中でもしんがりで、前の隊の人々にどんなことが起こったかを記録したり、ときに物語調にして書き留める。文芸というものは芸術の中でも比較的時間差があって、比較的後追いの表現なのだという。
言われてみれば、震災のことをテーマにした作品も、最初は写真やドキュメンタリー映像、美術作品が生まれ、次に音楽や詩、文学作品は1年2年、またはそれ以降、すこし時間をおいて生まれていたようにも思う。
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