SF作家として仕事をさせてもらっていると、しばしば未来への提言だとか、未来予知のようなコメントを求められることがある。もちろんSF作家はあらゆる未来を想像しつつ作品を書くことが多いので、それについて気付いたことを話させていただくことがある。ただ、SFに限らずなにか物語を作る人間というのは、はたから見たら予測に見えるかもしれないけれど、予測とはすこし違うものではないだろうか。というか、考え方によってはまったく反対の性質を持つもののはずだ。こう書くと、未来を的中させられない者の言い訳みたいに聞こえてしまいそうだけれど、ただ、実際そうなのだから仕方ない。
これは文章でも絵でも映画でも良いのだけど、つまり物語の作り手の仕事は、多くの選択肢の中からひとつを選んで社会を導くことではなく、そのような、世の中にいろいろある選択肢をさらに増やすことに近い。選択肢を絞るということはどちらかというと効率を重視する行為、そして選択肢を増やすことは非効率な行為だ。
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