毎晩、眠る前に本を読んでもらった。「そらいろのたね」「ぐるんぱのようちえん」「モモちゃんとアカネちゃん」。母が語る声やページをめくる手の動きが、記憶の底に刻まれている。読み聞かせはアロマセラピーやマッサージと同じ、緊張を和らげる作用があるという。たしかに私はよく眠る子供だった。
中高時代、友達に誘われて入った放送部で、毎年朗読コンクールに参加した。有島武郎、志賀直哉、幸田文。敷居が高かった純文学も、繰り返し読むうちに作者の深い意図に思い至り、日本語の響きやリズムを感じ取った。
この記事は会員限定です。新聞購読者は会員登録だけで続きをお読みいただけます。