スポーツは「見る」だけでも健康効果が得られるという。とすると今の私はすこぶる好調だ。五輪はアトランタ、長野、シドニーで現地の熱狂を取材したが、これほどさまざまな競技を堪能した五輪は初めてだった。数多くの意見を受け止め、迷いを振り払い、無心で競技に向き合う選手の姿に胸を打たれた。

　そして甲子園。高校球児の出番だ。蔦（つた）で覆われた球場は子供のころの思い出と共にある。バックスクリーン裏に祖父母の家があった。玄関を開け放すと歓声とテレビ中継が重なって聞こえた。小学６年生の夏、祖父の初盆の法要の後、父に誘われて外野席の上段に座った。入道雲が近く、吹き抜ける浜風が心地良かった。「試合に夢中になって、かち割り氷売りのバイトをクビになってなあ」と話す父の横顔に青春を感じた。