送りに来ていた友人とホームで別れ、新幹線のドアが閉まり、列車はホームを離れていった。列車が東京駅を後にした時、こみあげるものがあり、自然と涙がこぼれた。卒業後、勤めていた保険会社をやめ関西で義兄の仕事を手伝うために東京を離れた瞬間である。
サラリーマンの生活も安定していて、決して悪いわけではなかったが、母と祖母を養っていくのに若干自信がなかったこともあり、義兄からの誘いを断らなかった。少ししんみりした門出ではあったが、車窓の美しい富士山は気持ちを前向きに変えてくれた。白く雪をかぶり、本当に奇麗(きれい)だった。
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