ベトナムの病院で保護されたマルちゃん(画像提供:越南猫の日本暮らしさん)
ベトナムの病院で保護されたマルちゃん(画像提供:越南猫の日本暮らしさん)

今から5年前、ベトナムで暮らしていたXユーザー・越南猫の日本暮らしさん(@BoxCatSoft)は、路地をさまよっていた1匹の小さなキジ白猫と出会いました。猫風邪で衰弱していたその子が、のちに家族となる「マル」ちゃん(推定5歳~6歳・男の子)です。

「2020年6月、マルちゃんは路地を1匹でさまよっていたところをベトナム現地の病院に保護されました。当時、生後推定1カ月くらい。私は、病院からの『迷い猫を保護しました。心当たりの方はいますか?』というお知らせを目にしました。飼い主さんがいなかったため、私が迎え入れることにしました」

人に慣れていたのか威嚇もなく、「ニャーニャー」と鳴いていたマルちゃん。キャリーバッグに素直に入り、家へ向かう途中もバッグの隙間から興味深そうに外を眺めていたそうです。

■元気いっぱい! そして日本への長旅

新しい暮らしは驚くほどスムーズに始まりました。

「とても性格のいい子で、これといったトラブルはありませんでした。ただ、食べ物の好みははっきりしてます。一度、高いごはんをあげたところ、ほかのごはんをあげても食べなくなってしまいました」

マルちゃんは、数日経ったころには飼い主さんのお腹の上で眠るように。壺やカバン、冷蔵庫の中に飛び込むなど、元気いっぱいの姿に笑わされることも多かったといいます。

やがて飼い主さんの帰国が決まり、マルちゃんも一緒に日本へ渡ることになりました。

「ベトナムから連れて帰る際は、準備に約6カ月を要し、費用もかなりかかりました。帰国には狂犬病抗体検査が必要でしたが、現地には施設がなかったため、採血した血液をフランスの検査機関へ送り、検査を受ける必要があったのです。そうした大変な準備を経て迎えた帰国当日、空港へ向かう道中では、ただならぬ雰囲気を察したのか、怖がって『ニャーニャー』と鳴いていました」

ハノイから大阪までは直行便を選び、直前まで自宅で過ごさせるなど負担を減らす工夫も。関西国際空港で再会した際には元気に鳴いており、職員から「とてもフレンドリーな猫さんですね」と褒められたことをよく覚えているそうです。

■日本で始まった“猫との新生活”

帰国後もマルちゃんは環境にすぐ適応し、落ち着いて暮らしていました。

「日本に来て1軒家で暮らし始めたので、毎日毎日『外へ出せ』アピールが増えました。病気になるのが怖いので、外には出していません。その代わり、たくさん遊んであげています」

食事面では苦労がありました。ベトナムで食べていたフードを日本でも買って与えたものの、なぜか食べなかったのだとか。試行錯誤の末、お気に入りを見つけられて今は安心しているそうです。

「日本に帰国して良かったことは動物病院がたくさんあることです。ペット医療の質も高いように思えます。一方、大変なことは猫と暮らせる家を借りるときに別途費用がかかること。外国人の知り合いも『退去するときに特別料金をとられる』と頭を抱えていました。ベトナムは壁が石やコンクリートでできている家が多く、猫との生活は快適でしたね」

■わがままだけど愛しいーーマルちゃんとの日常

成長したマルちゃんは、甘やかされて育ったせいか、とてもわがままな性格になったそうです。

「とても甘やかして育てたので、猫らしいわがままな性格になりました。特にご飯へのこだわりが異常です。ウェットフードは決まったブランドのものしか食べません。決まった時間にご飯をあげないと暴れます」

一日に一度は飼い主さんのお腹に乗ってお尻を向けるという“儀式”を欠かさず、臆病な一面も持ち合わせています。ある日、窓から脱走して一晩外で過ごしてしまったこともありました。

「翌朝、脱走に気づいて名前を呼ぶと、すぐに床下の隙間から泣きそうな声で『ニャーニャー』と鳴いて出てきました。それ以来、一度もその窓から外に出ることはありませんでした」

観察力も鋭く、飼い主さんの動作を真似して窓のロックを外したこともあるそうで、その賢さには驚かされたといいます。

■「最後まで一緒に」 今、伝えたい思い

出会いから5年近く、マルちゃんは飼い主さんの生活に欠かせない存在となりました。

「私が辛いときも嬉しいときも、猫はいつも変わらないです。好きなときにご飯を食べて、寝て、遊んでーーその姿が本当に愛らしいです。いたずらしたときに叱ったこともありますし、喧嘩したこともありますが、すぐに『ニャー』と鳴いて仲直りしてくれます」

最後に、飼い主さんは温かい想いを込めてこう結びます。

「私の都合で日本へ連れ帰ってごめんね。どんなにわがままで、いたずらをしても、最後まで一緒にいるから。毎日好きなことを好きなだけしてね」

(まいどなニュース特約・梨木 香奈)