夜の生活が苦痛な夫婦…解決策とは? ※画像はイメージです(folyphoto/stock.adobe.com)
夜の生活が苦痛な夫婦…解決策とは? ※画像はイメージです(folyphoto/stock.adobe.com)

A子さんの1日は、家族のために息つく暇もなく過ぎていきます。パートから帰るとすぐに夕飯の支度に取り掛かり、中学生と小学生の子供たちの宿題に目を通します。深夜、課長職の夫が帰宅すると、そこからがA子さんにとって最も気の重い時間でした。

夫からの夜のお誘いは、愛情の交換ではなく、一方的な欲求のはけ口でしかありませんでした。A子さんの気持ちを無視して強引に体を求め、自分が満足するとすぐに背を向けて寝てしまいます。

A子さんはただ早く終わることだけを願い、天井の染みを数えながら息を殺していました。夫を苛立たせないように感じているふりをすることにも、もう慣れてしまいました。

ある夜、虚しさを感じていたA子さんは、広告で流れてきた既婚者マッチングアプリに登録します。良くないことだと思ってはいますが、踏みとどまれません。A子さんが不倫に走らないためには、どのような対応が必要でしょうか。夫婦関係修復カウンセリング専門行政書士の木下雅子さんに話を聞きました。

■「感じたふり」はやめるべき

ーこのような状態で、浮気をしてしまう人は多いのでしょうか

家庭内で満たされない寂しさを抱える既婚者が、マッチングアプリなどを通じて外部に救いを求めるケースは少なくありません。これは目の前の快楽に手が伸びてしまう人間の自然な欲求とも言えます。

もちろん浮気という行為が推奨されるわけではありません。しかし単純に「裏切った側が悪い」と断罪するだけでは、根本的な問題は何も解決しません。なぜ、その人がそのような行動に至ってしまったのか、その背景にある夫婦関係の問題に目を向けることがとても重要です。

ーA子さんは夫に、どのようなアプローチをすればいいのでしょうか

まず、最も大切なのは「感じたふり」をやめることです。これはご自身の首を絞めているのと同じ行為です。夫は「妻は満足している、自分のやり方でいいんだ」と勘違いし続け、状況は悪化する一方です。

とはいえ、いきなり「実は感じていなかった」と伝えても、夫のプライドを傷つけ、関係をこじらせるだけでしょう。「あなたは下手だ」ではなく、「私は、もっとこうしてくれると嬉しいな」というように、ポジティブなリクエストとして伝えてみてください。

ーA子さんが、夫との充実した夜の生活を取り戻す日は来るのでしょうか

可能性は十分にあります。実際に、A子さんと同じような悩みを抱えながらも、関係を修復し、以前よりも良好なパートナーシップを築いたご夫婦はたくさんいらっしゃいます。

ただし、そのためにはA子さん自身の意識を少し変える必要があるかもしれません。それは「夫を育てる」という視点を持つことです。

夜の生活のことだけでなく、まずは普段の生活の中で、夫が何かをしてくれた時に「ありがとう」と笑顔で伝え、楽しい会話の時間を増やし、夫婦の空気感を温かいものに変えていくことから始めてみてください。家庭が安らげる場所になれば、夫の心にも余裕が生まれ、A子さんへの態度も自然と変わってくるはずです。

夫婦関係は、どちらか一方だけが努力して成り立つものではありません。しかし、A子さんが賢く、そして根気強く働きかけることで、夫はA子さんを単なる欲求の対象ではなく、愛すべきパートナーとして再び見つめ直す日が来ることでしょう。諦める必要はまったくありません。

◆木下雅子(きのした・まさこ)
行政書士、心理カウンセラー 大阪府高槻市を拠点に「夫婦関係修復カウンセリング」を主業務として活動。「法」と「心」の両面から、顧客を支えている。

(まいどなニュース特約・長澤 芳子)