ブンコレ~おすすめ文具コレクション
肥後守 携帯ナイフ納品1年待ち
鉛筆を削り、果物の皮をむき、竹とんぼを細工し-。かつてあまねく国民が手にした折り畳み式ナイフ「肥後守(ひごのかみ)」は、兵庫県三木市の永尾かね駒製作所が1軒で作り続けています。海外で人気とのことで、納品まで約1年待ちだそうです。
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同社は1894(明治27)年の創業。肥後守は当時、金物問屋が三木に持ち帰った小刀を、周辺の職人らが携帯しやすいよう折り畳み式に改良して全国区の支持を得た。とりわけ人気のあった九州にちなんで、商標を登録したという。
1960年代以降、刃物追放運動が広がり、電動鉛筆削りやカッターが普及、需要は激減した。三木だけで約40軒あったメーカーも廃業が相次ぎ、同社を除いて消えた。
5代目永尾光雄さん(54)は2010年、周囲の勧めで父の後を継ぐと決めた。何年も売れなかったが、つちでたたいて強度と切れ味を高める「鍛造」の技術を磨くと、欧米を中心に売り上げは急増し、海外比率は半数以上に膨らんだ。
近年は、アウトドアブランドとのコラボにも取り組む。工程はものによって約30に上るが、手間を惜しまない。受け継いだ「安くて、切れて、みんなが持てる」の理念を貫く。(佐伯竜一)