ブンコレ~おすすめ文具コレクション
クレパス 線でも面でも描きやすく
「オイルパステル」と聞いて、クレパスを思い浮かべる人は文具通(つう)かもしれません。前者は一般名詞。クレパスは、製造元のサクラクレパス(大阪市)が名付けた商標です。
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かつて子どもの絵画教育は、手本の模写が中心だった。1925(大正14)年、「感じたまま写生させよう」と唱える運動にこたえ、同社の前身がクレパスを発明した。
クレパスは、クレヨンに液体油などを加えた棒状の画材。当時のクレヨンは硬く、線を描きやすい半面、面を塗るには不向きだった。油分の多いクレパスは軟らかくてのびが良く、線描と面描、さらに粉状のパステルのような混色も可能になった。
寒暖で品質が左右されるため「やわらかい・冬用」「かたい・夏用」の2種を投入したが、出荷時に双方が入れ替わるなどして苦情が相次ぎ、倒産の危機に見舞われたとか。
3年後、製法を改良し通年で使えるように。色を重ねたり油彩のように厚く盛ったり、表現は広がった。69年には黄色を基調にヨットや花、鳥の絵が入ったパッケージにした。年産2500万本余り。今年も、たくさんの小さな手と出会う季節を迎える。(佐伯竜一)