ブンコレ~おすすめ文具コレクション
神戸ノート レトロな色表紙 愛され70年
「れんらくちょう」「百字練習帳」「えにっき」。文字の並びで、神戸市出身者はお気付きでしょうか。発売以来、地元の小学生に選ばれ、売り場に積み上がる「神戸ノート」。正式には「関西ノートB5学習帳」という。誕生のきっかけは、かの朝鮮戦争(1950~53年)だそうで-。
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26(大正15)年創業の関西ノート(神戸市長田区)が52年、1冊15円で発売した。
戦争の特需で経済格差が広がり、児童の机上には外国製ノートや、わら半紙が混在した。神戸の教師らは「高品質、低価格で誰でも使いやすいノートを」と、同社に製作を依頼した。
1冊ずつ上質紙をミシンで縫い、背表紙にクロスを貼って製本する。「神戸ノート」の愛称とともに支持は程なく広まったらしい。
表紙は目的別にモノトーンに色分けし、神戸の風景の写真などであしらった。需要の変化でA5判を廃止したが、デザインは50年ほど変わっていない。神戸の子は「表紙の文字を見んでも、色で分かる」といわれる。
市教育委員会は指定していないが、文具店や量販店に他社製がないケースもあり、自らも愛用した保護者が子に買い与える。販売累計は不明だが、「自由帳」「こくごちょう」「さんすうちょう」など21種類を本社工場で変わらず手作りしている。
「使いやすいか? いやー、神戸はこれしかないし、どうなんかな」と市民。地域限定のノートは全国でも珍しい。首都圏ではレトロでカワイイ雑貨として人気という。
2017年、同じ表紙でB7判のメモ帳を開発すると、オトナ女子に好評を博した。冒頭の3冊は今年、本物と同じ罫線入りを追加で発売した。
創業者のひ孫で、自らも使った大河裕二相談役(54)は「家業の製品ですが、百字練習帳なんて、さんざん漢字の書き取りをさせられた。思い出したくもない」と笑い、「子どもにこびないデザイン。時に懐かしく、新鮮に映るようだ。広く手にしてもらえたら」と話す。
流行に左右されず、そこはかとない上品さを感じさせる姿形。王道を歩む神戸ファッションに相通じるような気もする。(佐伯竜一)