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立候補予定の橘秀太郎氏(左から)、門間雄司氏、岡本拓斗氏=豊岡市大手町
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立候補予定の橘秀太郎氏(左から)、門間雄司氏、岡本拓斗氏=豊岡市大手町
立候補予定の岡本拓斗氏
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立候補予定の岡本拓斗氏
立候補予定の門間雄司氏
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立候補予定の門間雄司氏
立候補予定の橘秀太郎氏
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立候補予定の橘秀太郎氏

 兵庫県議選の豊岡市・美方郡選挙区(定数2)に立候補を予定する岡本拓斗、門間雄司、橘秀太郎の3氏(五十音順)による公開討論会が同県豊岡市内であった。豊岡、美方、香住の3青年会議所が主催した。

 詳細は以下の通り。

 -立候補の理由と自己紹介を

 橘氏 「48歳。出身は香美町香住区。香住小を卒業するまで旧香住町で過ごした。中学、高校の6年間を(一貫校の)岡山白陵で寮生活をした。厳しい寮生活が私の原点。6年間ではいろいろな学びがあった。東京の中央大に進学して東京で働き、35歳で香住に戻ってきた」

 「その時に一番感じたのは昔住んでいた古里と(Uターンした際に感じた古里)の差。昔は活気のあふれる漁港だった。帰ってきた時は、記憶とは違った古里になっていた。これが政治を志す原点となった。この地域に帰ってくる理由があるのか考えた。当時、香美町議員になったのは38歳で、子どもが1人いた。選挙時は1歳の長男と、妻のお腹には子どもがいた。この地域に若者が帰ってくる、そんな地域にしたいと思って、政治家を目指した。その志は今も変わらない。地域のためにしっかりと頑張る」

 門間氏 「51歳。34歳から豊岡市議会議員を3期務め、今は県議2期目。原点は災害だ。(2004年の台風)23号災害で地元の堤防が決壊した。経歴とも関わるが、最初は建設コンサルタントの会社に勤めていた。地滑り、崖崩れなど防災関係の技術者だったが、縁あって地元に帰り、金融機関で働くようになった」

 「普段見慣れた風景、堤防が決壊したことに衝撃を受けた。設計して役所に提出すれば地域は守られると思ったが、想定外の気象条件には耐えられなかった。命や地域を守るにはどうしたらいいのかを考えると、政治家になって先頭に立って、この地域を守っていかないとけないと思ってしまった。金融機関を辞めて政治家に一歩踏み出した」

 「市会議員になってみると、災害だけでなく、人口減少や高齢化、普段当たり前として享受している社会のシステムやインフラなどがそがれていく現実を目の当たりにした。ベースは防災だが、人口が減ることへのさまざまな負の状況がある。これからは政治家、行政としても、転ばぬ先の杖として、今起きていることを下げ止まらせる。みなさんに将来のビジョン示すことが大事だと思う」

 岡本氏 「4月で27歳になる。豊岡で生まれ育った。豊岡総合高校を卒業して進学のために京都に出た。仕事を含めて7年ほど豊岡から離れていた。3年前に戻り、整体院を開業。楽しく日々を過ごしているが、正直なところ、京都にいた7年間で地元に希望も期待もなかった。ただ、都会に比べて給料の良い職場がなく、20代の若者の遊び場がなく、友人も都会に出ていて、楽しめる場所ない。僕自身、希望を感じられなかった」

 「同じ理由で、多くの若い世代が、帰りたくても帰りたくない、帰れないという若者が多いのが現状。でも、但馬地域の昔ながらの人と人のつながりや、子どもとの接し方の文化が好きだ。豊岡に帰ってきて起業した。1歳の子どもがいるが、地域の高齢者や昔から知ってくれている近所の人に『こんにちは』と手を振ってくれる。子どももだんだん慣れて、笑顔で手を振り返すようになり、社交性や接し方を学び始めた。人との接し方や子どもを大切にしていく文化をなくしたくない。ただ、田舎ならではの古い体制は続けすぎても良いまちにはならないと思う。IT化も進めたい」

 -大阪・関西万博も踏まえて、但馬地域の産業・観光・商業をどう活性化するか

 門間氏 「(豊岡市と美方郡には)日本に誇る地場産業のかばん、世界にも誇れる但馬牛、日本と世界に誇れるカニやホタルイカ、ハタハタなどの水産業がある。農業、コウノトリ、梨、芸術文化観光専門職大学のほか、観光温泉地の城崎や湯村、竹野、浜坂、香住も日本に誇れる資源だ。これらをどう生かすかが問われている」

 「(産業・観光・商業の基盤となる)インフラ整備は欠かすことができない。県内でも遅れている地域。待っていても、積極的に誰もしてくれない時代になってきている。直近でやるべきことは経済活動を支えること。その後、補助金、助成金、規制緩和でもいい、仕事をしやすくしていかないといけない。人材不足も深刻だ。産業商業観光の中で県の施策で取り組む」

 岡本氏 「かばん、温泉、漁業、城下町など個性豊かな資源が魅力だ。海、山、温泉もあって自然豊かな古くからの文化もある。但馬牛、カニ、コウノトリ育むお米などの魅力的な食材と自然がそろう。都会にはないものがある。京都から帰ってきたからこそ感じられた。万博に向けて、地方の魅力をインバウンド(訪日客)に届けなければいけない。その前に交通インフラの整備が必要。まず、この地域があるということ。豊岡と美方に、美しい自然とおいしい食材があることを、国内外にもっとPRしないといけない。県としても交流サイト(SNS)をフル活用して、ジオパークや竹野浜、おいしい但馬牛など海外の人にも知ってもらえるようPRに力を入れる」

 橘氏 「この地域に必要なのは産業振興と人材育成だ。ずっと公約に挙げている。産業振興ではまず、地場産業に加えて、新しい産業が必要だ。但馬地域は観光業、水産業、畜産農業、建設業などいろんな地場産業がある。農林水産と観光は強い結びつきがある。カニが取れないと観光が落ち込む。コロナで観光業が落ち込んだ。いろいろなことが絡み合っての観光業。観光だけ頑張れば良いのではない。この地域は民間と行政がしっかり連携しないといけない。政治家の力量が発揮される」

 -子育て・教育施策についてはどう考える。

 橘氏 「(Uターンで)帰ってきて塾をしていた。小中学校のうち、最近は英語教育というが、国語力と計算力が基本。英語力が上がっても母国語をいかに操るかが論理的思考能力を高める。これは国語力。国語力を上げた上で英語力を高めるのが一番。小中学校でもふるさと教育がされている。大賛成だ。この地域で基礎学力を身につけた子が帰ってくる、そのためにはふるさと教育が必要。学校が全てではなく、ふるさと教育の基本は家庭教育。若い世代の人には、お子さんと家庭で会話をして家庭教育を促進してほしい」

 「この地域に帰ってくること、優秀な子をこの地域で教育して、高校、大学と将来的には外に出る子が多いかもしれないが、将来的には帰ってくる。これが但馬地域の今後のあるべき姿であり、教育の一番の根源である。私も小学6、4、1年生の3人いるが、帰ってこいと言っている。この地域で基本的な教育を成立させてこの地域に帰ってくる教育をしたい。そのために県は何ができるのか、市町の教育委員会と連携することが大事だ」

 門間氏 「芸術文化観光専門職大学の平田オリザ学長が、豊岡市で演劇を用いたコミュニケーション教育を実践している。さまざまな教育現場で話をされ、私も見聞きすることがある。コミュニケーション教育は学力にかけ算の効果をもたらす。但馬の特徴として、伸ばすには地域で実装していくべき。二つ目はやはり、情報通信技術(ICT)。タブレットを持たせるだけでない。どう生かすか県内で一律の指導方法が定まっていないとも聞いている。現場の先生や課題状況も違っていると聞いているので、県の中で差があってはいけない」

 「今の子どもたちに適切に教育環境を提供するのは、機械を与えるだけではいけない。課題解消をやっていく。放課後児童クラブについても、午後の6時を4時までに短くしたら、評判がよろしくないことがあった。子育てしている人たちに寄り添う政策を一から考えないといけないと思っている」

 岡本氏 「学生だった頃、高校生だった頃が10年前で記憶は鮮明だ。今の学校は答えが決まっているものを見つけたり、正解がある設問の正解を見つけさせたりなど、テストの点数で子どもの個人の能力を測るのが現時点の教育。豊岡市の平田オリザさんの演劇のワークショップは、演劇を通した表現活動で『共感能力』を高めることを2015年から導入されているが、授業を受けた人に聞いたら、自分がもともと持っていた表現しきれなかったものが表現できた、友達とコミュニケーションをとりやすくなったと言っていた。テストも大事だが、人とのつながり、生きていく上でなくせないもの、人の感情を読み取る共感能力もこれからの教育現場で必要になってくる。演劇ワークショップが但馬全域に広がることが大事。子育て環境の整備で、兵庫維新の会の政策でもあるが、私学も含めた県内全域の教育無償化、小中学校の給食の無料化を全力で推進している。経済的理由で能力に合わせた教育を受けられない子どもをなくしていきたい」

 -交通インフラ施策をどう考える。

 門間氏 「具体的な大きなスキーム(枠組み)はなかなかない。現場レベルで活動をしてきたことを紹介する。昨今、無償ボランティア輸送という仕組みが実はできている。白タクで違法ではなく実費。地域の人が乗せて運ぶ。地域の協力を得ながらやっていく。年配の人の移動手段を確保していくことが必要だ。交通の移動整備については、地域によってばらつきが出るかもしれないが、まずやってみる」

 「JRについては二つの段階がある。今は利用促進。これがうまくいかなければ、上下分離で維持する。今はまだ利用促進の段階だ。県が中心になって会議をつくった。いろんなメニューをつくった。JRは(利用促進の対策を)やってきたと意見を言っていたようだが、利用促進のために観光利用と日常の利用を進める。一つはサイクルトレイン。自転車のまま乗せるようにすると、1時間に1本の時間が有効に使える。どんどん提案していく」

 岡本氏 「乗り合いバスや無償タクシーなどしっかりと整備していくことが必要と(門間氏と)同じ意見で思っている。移動手段は必要だが、(消費者が)移動しなくても(売り手が消費者のもとに向かう)『移動スーパー』なども必要。JRの赤字路線では、香住の旅館に泊まりに来た人が午前9時か10時にチェックアウトしないといけない。次の列車が11時までこない。地域の人からすると、11時まで来ないから、利用者が少なくなるとの意見があったみたいだが、逆に来ないなら、9~11時に2時間余裕がある。その時間で『駅ナカカフェ』や、旅館の周りに若い世代でもカフェ飲食店をやりたい人がいる。地方に観光客が残りの2時間を楽しめるような施設が増えるよう、開業や起業の支援を今以上にやっていくことが必要。やっていきたい」

 橘氏 「これといった特効薬はない。JRに関しても、国鉄が民営化された一つの条件があった。西日本が一つの会社になった。これはどうやってなったのか。京阪神のもうかる路線や山陰線、播但線などの赤字路線もひっくるめてしっかり守るから分社化、民営化する条件があった。昨年の春、赤字の記事があった。あの出し方は、民営化の精神から外れた議論になっている」

 「県も市町もJRには言っているが、民間なので言うこと聞いてくれないのが実情。減便されているが、使い勝手が悪くなる。普通民営化なら赤字にならないよう便利にしていくのが普通の民間の考え方。減便して維持していくのではなく、使いやすくするよう工夫したインフラを整えなければ。空も同じ。守っていかないといけない。JR、バスも、ボランティア輸送も。いろんな公共交通が連携して使いやすく整えなければ」

 -住民意見の反映については。

 岡本氏 「あんまマッサージ指圧師で整体院をやっていて、中学生から90代まで毎日5~6人、1カ月に100人以上来てくれる。1時間くらい時間があり、話を聞かせてくださる。こういう場に慣れていないが、毎日いろいろな話しを聞かせてもらっている中で、いろいろな人の話を聞くのは得意になった。来店者の意見だけでなく、定期的に具体的にではないが、タウンミーティングの開催や地方を回ること。政治活動の一環で回っているが、『豊岡出身なんでしょ』『香美、美方は、出身じゃないから放っておくんでしょ』と言われるが、自身は(香住区の)佐津に親戚がいて遊びに行っていた。知らない地域ではない。いろいろな世代の人の話を聞きたい。周りの20代ばかりと話していると、上の世代の声は入ってきにくい年齢層ではあるが、自分から足を運んで声を聞きに行きたい」

 橘氏 「首長と違って執行権はないが、県庁は割に県会議員と執行部の意見をしっかり闘わせながら寄り添い、意見を言い合いながら施策を組み立てている(と県議になって感じた)。但馬地域の意見を執行部に伝えていくのが県議の仕事。(香美町の)町会議員をしていた。草の根の市議会、町議会の意見も参考になる。神戸ばかりでなくて、割と地元にもいる。住民や知り合いと意見交換をするのは勉強になる。漁港で競りを見たり、水産加工業者や仲買人と話しをしたり、生の声が聞けて勉強になる。子育て世代と話しをしたら、何が困っているのか分かる。私が心がけているのが現場主義。いろいろな所に足を運んで意見を吸い上げる。これが基本。これからも同じようにしていく」

 門間氏 「一言で言うとつながり。関係団体とつながりが広がっていく。そこから問題点はその人たちのことだけではなく、但馬の大きな課題の現象の一つではないか。そこを広げて政策に反映していく。例えばボランティアで堤防の草刈り。高齢化でどうすればいいかと相談を受けたので、県豊岡土木事務所に限定してモデル的に草刈り機のレンタル制度を作った。豊岡だけだが、県内で困っている人は多いだろう。管内のモデルを先行事例として県全体につなげる。木を見て森を見る。一つの現場の声を県の政策の全般に提言してつなげていく。これが住民意見の反映、県全体のプラスにつなげていく。これを信条として普段から活動させていただき、これからも大切にしてやっていきたい」

 -立候補を決めた理由と意気込みを。

 橘氏 「政治家を目指した原点は古里。心の中に深く根付いている。中学から寮生活を送り、古里を離れた期間が長いからこそ、古里を思う時間が多くあった。将来的には帰ってこよう、いつ帰ろうかと思っていた。帰ってきて政治活動しても、古里を思う気持ちは変わらない。子どもが30年後に帰ってこられる地域を残すことが、私たちに課せられた大きな課題だ」

 「人口減少が甚だしい。人口減少ばかり言っていては夢も希望もない。人口は増やしていくべき。政治家だからこそ、理想を掲げたい。子どもたちがここに帰ってくる、ここで子育てして次の世代につなげる。そのためには子育て支援も大事だが、基本は産業振興。経済的に恵まれなければ子どもたちは帰ってこない。都会はきれいでもうかる、素晴らしいと思って(都会に)出て行く子が多い中で、ここ(美方郡)でもやっていけるんだと見せられる、そういう大人にならなければならない。だからこそ、子育て世代が頑張らないといけない。高齢者を支え、高齢者も暮らしていけると見せなければいけない。高齢者にも楽しんでもらいたい。そういう地域になってほしい。全国で田舎はいろんな課題を抱えている。ここで田舎がステップアップできる地域モデルが作れたら、全国のモデルになれると思う」

 門間氏 「童謡『ふるさと』の3番目の歌詞に『志をはたして いつの日か帰らん』とある。明治維新以降、田舎を出て何かを成し遂げて帰らなければ、というのを潜在的に刷り込んだのかもしれない。コロナで地域創生というのは、この地域で志を果たせる地域にしなければならないが、現実はそんなに甘くない。豊岡だけでも毎年700人くらい減っている。但馬全体ではその倍。卑下するのではなく、逆手に取る。キーワードにしている」

 「人が少ないからこそ、できることがある。先進技術の導入、自動運転やドローン。極端だが、都会では飛ばしにくくて危ない。田舎は人が少ないので、先に社会実装しても(メリットを)享受する割合が高いと思う。市ではできない。国は制度を作るだけ。そこで県の出番だ。県の立場だからこそ、しっかりとできる。大きなことから小さなことまで県政で実現していきたい」

 岡本氏 「聞き苦しい演説だったかもしれないが、ありがとうございました。経験も知識も2人に比べてない。これから全力で勉強して行動して改革、良くしていきたい。何か人のために活動していきたい。そういう思いは負けていない自信がある。祖父が最近、介護が必要になってしまい、歩けなくなった。祖父が大好きで、歩けなくなって、久しぶりに会った時にげっそりやせている姿を見てつらかった。1歳の子どももいる。これからの介護の大変さ、自分が直接介護するわけではなく、協力はするが、家族総出で介護を見守る現実と、未来を担う子ども、生まれたての子どもや小学生を含め、少子化や介護に自分自身が直面している。これを何とかしたいという気持ちしかない」

 「『みんなが幸せに』と言うと『きれいごとか』と言われるが、きれいごとで夢見がちかもしれないが、きれいごとや夢を現実にしていく。行政の改革制度、税金の使い方を変えていって改革していく。生活を一歩でも、100人全員が幸せは難しくても、一人でも幸せになる方法をみなさんと一緒に考えていきたい」

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