「公文式」で知られる公文教育研究会(大阪府)が、少年院「加古川学園」(加古川市八幡町宗佐)で、15~20歳の在院者を対象に授業を行っている。基礎学力を身に付けることで、出院後の就職などに役立ててもらうのが狙い。法務省の委託を受けた取り組みで、2022年から他の少年院に先駆けて実施している。10月中旬には報道陣に授業が公開され、同学園は「就職して仕事を継続できるよう頑張ってほしい」としている。(斎藤 誉)
「就職した時に、自分の伝えたいことが伝わらなかった。それを身に付けたい」「継続することが苦手で、物事を続けられるようになりたい」-。
受講の理由はさまざまだが、同学園での授業には有志の男子在院者10人が参加する。
「よろしくお願いします!」-。あどけなさが残る少年たちの大きなあいさつの声が教室に響き、10月16日の授業が始まった。
同学園では、国語と算数・数学を学ぶ。この日は本年度2回目の授業。ホワイトボードに向かって着席した在院者たちは、赤ペンで添削された自分の答案と向き合い、宿題で何ができて何ができなかったのかを振り返る。
公文式は、各自の習熟度に応じたプリントを配布して、添削しながら満点が取れるまで反復して問題を解いていく。同学園では、算数は足し算引き算を、国語では文章の言い換えなど、それぞれの習熟度に応じてスタートやゴールが決まる。
公開された授業では、2人の講師が教室内を巡回して少年たちから質問を受けていた。質問を受けるだけでなく、講師から「(宿題の字が)きれいだったからお手本の字をなぞったんかと思った」などと声をかける場面があった。生徒をほめるのも公文式の特徴の一つ。同学園の榎本康人法務教官専門官は「(在院者の中には)外部の人にほめられたことがない人もいる。ほめられた経験が自信になり、再犯防止の一助になれば」と期待を込める。
講師が来るのは1週間に1日で、残りの6日間はおのおのが学習時間を捻出して宿題をこなす。時間を捻出することで自己管理能力を養う狙いもあるという。
同学園は西日本最大級の少年院で、敷地面積は甲子園球場4個分あり、10月16日時点では15~20歳の98人が生活する。
少年たちの学習の様子を見守ってきた同学園の榎本法務教官専門官は「何かを教えた後の反応が違ってくる」と学習の手応えを語る。
何か指導してもすぐに「すみません」と謝罪してやり過ごす少年がいた。少年は公文式学習に参加したことで、ただ謝るのではなく、自発的に指導内容を確認するようになったという。「コミュニケーション力の向上を肌で感じた」と榎本法務教官専門官は振り返った。
公文教育研究会は元々、東京と大阪で出院後の若者向けに国語と算数を教える事業を展開していた。しかし、出院後はさまざまな誘惑があり、以前の人間関係が戻ることで、再び非行の道へUターンすることも考えられるという。出院前に教育することで、就労継続を確かなものにして再非行防止につなげる狙いもあるという。
本年度は、同学園のほか、大阪府と奈良県の6カ所の少年院で同様のプログラムが実施されている。同学園が先行実施に選ばれたのは、出院後に就労を志す若者が多いことが予想されたため。同学園での本年度の公文式学習は3月26日まで。事業は27年度まで続き、今後、出院後の就労状況なども調査して効果を検証していくという。























