トルコ・ガランティ銀行向け国際協調融資の調印式。中央付近が黒木亮さん=1993年、ロンドン(黒木さん提供)
トルコ・ガランティ銀行向け国際協調融資の調印式。中央付近が黒木亮さん=1993年、ロンドン(黒木さん提供)

 タイトルがいい。作家黒木亮は、邦銀ロンドン支店で国際協調融資に打ち込んだ若き日々、呪文のように唱えて仕事に励んだという。「メイク・アンバンカブルズ・バンカブル」。銀行取引に適さないものを適するように変える-。背後にもちろんマーケットがあるのだが、もっと深いところに人々の営み、組織、風土への理解と共感が込められている。欧州、中東、アフリカで体験した数々のエピソードが自伝的作品の奥行きを広げている。何より多感な国際金融マンが時をへて経済小説作家に飛翔(ひしょう)する前史が読み取れるのが最大の魅力だ。