わが家の阿弥陀如来像は、神戸大空襲で焼け残り、阪神・淡路大震災でもかろうじて難を逃れた。震災では倒れた仏壇から投げ出され、両手の先が破損した。混乱した家中を探し続けたが、結局小さな手指は見つからず、家族は次第にその手のない姿に慣れてしまって長い年月が過ぎた。
私に仏壇の世話のお鉢が回ってきて、やっと仏像の手の修復に取りかかった。とはいえ私は木彫作家ではなく、まず自分の手に負える素材技法を試すだけでずいぶん手間どっている。ふと仏像全体をデータ化し、データ上で形を補完して3Dプリンターで「出力」することを想像する。いまや像の形状をデータ保存し量産できる時代だ。
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