姫路城天守閣のほぼ真下に位置する「お菊井戸」。多くの人が中をのぞき込む=姫路市本町
姫路城天守閣のほぼ真下に位置する「お菊井戸」。多くの人が中をのぞき込む=姫路市本町

■「スパイお菊」の壮大な戯作

 皿を数えるお菊の悲しげな声が聞こえ、同時にぐわらぐわらと皿の音が…

 「いちまーい、にまーい…」で知られるあまりにも有名な怪談ですが、その詳細を知っている人は意外に少ないのではないでしょうか。

 時は戦国時代(16世紀初頭)、小寺則職が若くして姫路城主となった頃です。小寺家の忠臣衣笠元信は、主家の乗っ取りをたくらむ家老青山鉄山をあやしんで、恋人お菊を鉄山の家に召し使いとして送り込み、その動向を探らせます。そう、お菊さんはスパイだったのです。