喜劇王チャールズ・チャップリンは1932(昭和7)年5月14日、初めて日本を訪れた。アメリカから世界一周の旅に出て3月イタリア・ナポリで乗船、インドネシア・バリ島、シンガポールなどを経て神戸港和田岬に入り、新港第1突堤に上陸。ファン数千人が出迎えた。船で旅行する時代、海外と結ぶ日本の玄関口は神戸だった。
「遂に来た!涙の喜劇王チャーリー、憧れの日本入り」と神戸新聞は翌日付1ページの記事で報じる。
兄のシドニー夫妻、日本人秘書・高野虎市らと車で神戸市内を回り、県庁横の料亭・菊水で薄茶を楽しんだ後、神戸発午後0時25分の特急「燕」に乗り込んだ。翌15日、東京で首相・犬養毅に面会する予定があったからだ。