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(左から)大西有香さん、宮井正貴さん、田中彩也香さん=尼崎南署
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(左から)大西有香さん、宮井正貴さん、田中彩也香さん=尼崎南署
田中尚美さん
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田中尚美さん
豊増里三さん(右)=尼崎東署
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豊増里三さん(右)=尼崎東署

 特殊詐欺にだまされていそうな高齢者が商業施設のATMなどにいる時、あなたが店員ならどうするか-。詐欺グループのうそを信じ込み、焦っているのを落ち着かせたり、制止したりして、被害を未然に防いだとして兵庫県の尼崎、西宮市内の3警察署長から6人が感謝状を贈られた。当時の状況を聞くと、共通して浮かび上がるのは「おせっかいの勇気」だ。

一人で抱え込まない

 尼崎市西難波郵便局の宮井正貴さん(40)と大西有香さん(29)、田中彩也香さん(22)

 見事な連携プレーだった。高齢男性(84)が知人の女性と2人で来店した時、男性の異変に気付いたのは田中さんだ。来店するたびに笑顔で話しかけてくれる客が、なぜか焦っている。

 声をかけると「尼崎市役所から来る郵便物が届いていない」と慌てて答え、隣の女性も動揺していた。

 「詐欺じゃないか? でもどうしたら…」。先輩の宮井さんに報告し、さらにベテランの大西さんにも事態を告げた。

 駆けつけた宮井さんが、男性客が強く握りしめるメモ紙を見つける。今から電話をするという郵便局のコールセンターが見覚えのない「03」から始まっていた。「これは東京の番号。尼崎にかかってくるはずのない番号だよ」と伝えた次の瞬間-。

 男性の携帯電話が鳴り始めた。番号表示は「03」。大西さんが強い口調で言った。「これは詐欺だからダメ。電話を取らないで」。宮井さんを中心に説得すると、一緒にいた女性も落ち着きを取り戻していった。

被害に遭う間際で

 西宮市高須町1の商業施設「メルカードむこがわ」の店長田中尚美さん

 「様子のおかしい人がATMにいる」。利用客からそんな連絡が管理事務所に入ると、体調の悪い人を想像した。実際にいたのは、携帯電話で何かを話しながらノートを開き、画面を操作する60代の女性だった。

 田中さんが「管理事務所の者ですが」と名乗って声をかけると、女性ははっきりと答えた。「はい。あとは、暗証番号を打つだけです」

 それは、女性が後の人生を分ける間際だっただろう。田中さんはすかさず「それだったら替わりますね」と通話中の女性から携帯電話を借り、やりとりを代わると、電話は途切れた。

 取り上げるような形になってしまったが、思い出したのは県警に配られたチラシだった。「ATMを操作している高齢者には、操作を中断させて」。

 振り込んでしまったら、もう取り返すことは難しい。

救えなかった悔しさ

 「セブン-イレブン尼崎食満7丁目店」店長の豊増里三さん(57)と30代女性店員

 1人で来店した80代の男性が真っ先に向かったのは電子マネーカードの売り場だった。しゃがみ込み、何やら携帯電話を操作している姿を見て、レジにいた女性店員は「見覚えのある横顔だな」と思った。

 レジで男性と対面し「お願いします」と5万円分の電子マネーと現金を差し出されて気付いた。

 「あの時の客だ…」。2019年の夏、この店で架空請求詐欺の被害に遭った男性だった。当時は心配しても聞く耳を持ってもらえなかった。「なぜ救えなかったのか」と悔やんだのを思い出し、ためらうことなく店長の豊増さんに報告し、男性を近くの交番に連れて行こうとすると、ちょうど警察官が通りかかった。

 店で詐欺被害を防いだのは今回で4回目。豊増さんも客が被害に遭った経験を教訓に、危うそうな時にはどう声をかけ、どう対応するかに研修を重ねる。それが、4人の人生を救った。

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