公立校同士の決勝は８年ぶりだった。

　２０１６年７月２８日、第９８回全国高校野球選手権兵庫大会の決勝は明石トーカロ球場であり、「市尼崎」が春の選抜大会ベスト８の明石商を３－２で破り、池山隆寛（元ヤクルト）を擁して初優勝した第６５回以来、３３年ぶりに王座を奪回した。

　甲子園出場を決めた瞬間、００年の監督就任から１７年越しで悲願達成した元プロ投手の竹本修は「ここまで長かった…」と男泣きした。

　ちょうどこの年は尼崎市制１００年。甲子園では前田大輝主将が選手宣誓して花を添えた。

　当時の記事から市尼崎の熱戦とスタンドの熱狂を振り返る。（肩書、年齢は当時）

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■決勝

〈明石トーカロ〉

市尼崎００１０００１１０│３

明石商００１１００００×│２

■いざ決勝　明商、市尼崎ともに熱く

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■３３年ぶりＶ　甲子園へ

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■エースの母や野球部ＯＢ、通じた祈り

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■１７年越し、元プロの指揮官万感　甲子園へ

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■写真集

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■（阪神版）「追いつける」信じ歓喜　超満員のスタンド「頼もしくなった」

　市尼崎のエース平林弘人投手が最後の打者を打ち取った瞬間、三塁側スタンドは歓喜に包まれた。全国高校野球兵庫大会決勝が２８日、明石市の明石トーカロ球場で行われ、市尼崎が明石商を３－２で破り、３３年ぶりに優勝。「頼もしくなった」「いいメンバーに恵まれた」。保護者らは選手をたたえた。

　三塁側スタンドは試合前から超満員。野球部員や保護者のほか、吹奏楽部、バトントワリング部、夏休み中の生徒が駆け付けた。オレンジや緑のメガホン４００本を手に、声をからして応援した。

　野球部員がフェンスに飾ったのは、数多くの千羽鶴。今大会で対戦し、勝利したチームから譲り受けたもの。応援団長の２年生三谷浩司さん（１７）は「敗者の思いも背負っている。一つでも多く勝てるよう盛り上げたい」と一致団結を誓った。

　１－１の両者譲らぬ攻防が続き、試合が動いたのは四回。平林投手が明石商に１点を奪われた。それでもスタンドの野球部員が「弘人ええボールいっとるぞ」「こっからや、こっから」と励ました。

　チャンスが巡ってきたのは七回。谷尻尚紀選手らが出塁し１死一、二塁。飯田泰成選手が安打を放った際、相手の走塁妨害で同点に。宍粟市から駆け付けた谷尻選手の母、真利さん（４３）は「今年から下宿を始めて心配したが、覚悟を決めて良かった」と喜んだ。

　八回には、１死二塁の場面で平林投手が二塁打を放ち、決勝点となった。夢の甲子園が決まり、バトントワリング部の２年渡辺千陽さん（１６）は「絶対に追いつけると信じていた。世界一格好いい野球部」と、涙目で部員らとハイタッチ。３３年前、同校が甲子園出場を果たした時、応援団長を務めた近藤恭正さん（６９）は「若々しい姿を見て、昔を思い出した。甲子園でも仲間と共に頑張ってほしい」とエールを送った。

▼稲村市長コメント「市制１００年に喜びひとしお」

　尼崎市役所では市尼崎の優勝が決まった直後、庁内放送で「おめでとうございます。市制１００周年の記念すべき年の甲子園出場です。皆で応援しましょう」というメッセージが流れた。

　３３年ぶりの優勝について、稲村和美市長は「厳しい戦いを勝ち抜いた選手たちを誇りに思います。市制１００周年の甲子園出場に喜びもひとしお。甲子園でも市尼らしい野球を期待します」とコメントした。

〈市尼崎の優勝への足取り〉

スコア　対戦相手

２回戦　　９－０　夢前

３回戦　　３－０　福崎

４回戦　　７－３　長田

５回戦　　２－２　西宮今津

（延長十五回引き分け再試合）

５回戦　　２－１　西宮今津

準々決勝　１－０　報徳

準決勝　　５－３　社　

決勝　　　３－２　明石商