弟の顔が分からなかった-。兵庫県西宮市に住む内藤政良さん(73)は、阪神・淡路大震災で圧死した弟の尚克さん=当時(42)=の遺体に気付けなかったことを今も悔やみ、涙に暮れる。やりきれない思いを胸に、今年の1月17日も西宮市の西宮震災記念碑公園に向かう。(小谷千穂)
「ここに弟がいるはずや」。震災直後、政良さんは、崩れ落ちた芦屋市南宮町のアパートの前で、立ち尽くしていた。「おーい、尚克」。名前を呼んでも、返事はない。3日間、尚克さんが救助されるのを家の前で待ち続けた。
4歳年下。やんちゃだった長男の政良さんとは正反対の「真面目で偏屈」な次男だった。小学生のころ、芦屋会館にあった映画館に、こっそり忍び込んだことがある。先導する政良さんをよそに、尚克さんは気にくわない様子で「帰る」と出ていった。思い出せるのは、そんなまっすぐな尚克さんばかりだった。
独身だった尚克さんは、よく政良さんの子どもたちと遊んでいた。親や兄弟とは多く言葉を交わさなかったが、子どもといるときの尚克さんはよく笑っていた。震災の1週間前も、政良さんの自宅で楽しそうに話し込んでいたという。
あの日、政良さんは西宮市の自宅から、長男と自転車で、尚克さんが住んでいたアパートに向かった。「こりゃあかん」。アパートは隣の建物の下敷きになっていた。末の弟、明雄さんも一緒に暮らしていたが、救出されて無事だった。
3日後の深夜、尚克さんが搬出されたと連絡があった。近くの学校の教室に安置された遺体を、一人一人顔を近づけて見て歩いた。この人じゃない、この人じゃない…。すると、自分が見たはずの遺体を見て、尚克さんの会社の先輩が「内藤や」と叫んだ。そこには鼻が陥没した尚克さんがいた。
元気だった時の印象で、弟の顔を探していた。当時のことを考えると「心臓がバクバクして、泣いてしまう」と目頭を押さえる。「間近で見ているのに、気付けなかった。情けない」
石材店で働いていた尚克さん。結婚を考える恋人がいて、政良さんに「どう思う?」と相談していたという。「せめて『ええやん』って背中押してあげたらよかったな」
政良さんは、今も聞くことができない曲があるという。松任谷由実さんの「春よ、来い」。「瞼(まぶた)閉じればそこに 愛をくれし君の なつかしき声がする」。政良さんのまぶたの裏には、楽しげに笑う尚克さんの姿が消えない。
【特集ページ】阪神・淡路大震災

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