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始球式を務めた元・甲陽学院野球部の吉田裕翔さん(左)と捕手役の嘉村太志さん=甲子園球場(撮影・鈴木雅之)
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始球式を務めた元・甲陽学院野球部の吉田裕翔さん(左)と捕手役の嘉村太志さん=甲子園球場(撮影・鈴木雅之)
出場校のプラカードを手に選手たちを先導する市西宮の女子生徒たち=西宮市甲子園町、甲子園球場(撮影・秋山亮太)
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出場校のプラカードを手に選手たちを先導する市西宮の女子生徒たち=西宮市甲子園町、甲子園球場(撮影・秋山亮太)
出場校のプラカードを手に選手たちを先導する市西宮の女子生徒たち=西宮市甲子園町、甲子園球場(撮影・秋山亮太)
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出場校のプラカードを手に選手たちを先導する市西宮の女子生徒たち=西宮市甲子園町、甲子園球場(撮影・秋山亮太)

 全国高校野球選手権大会が10日、2年ぶりに開幕し、兵庫県西宮市ゆかりの若者たちが、開会式を支えるという“夢舞台”に立った。始球式では、昨年のコロナ禍による中止で出場機会を失った甲陽学院高(角石町)野球部OBの吉田裕翔さん(19)=関西医科大医学部1年=と嘉村太志さん(19)=大阪大医学部1年=という医大生2人がバッテリーを組み、球児らと共に医療従事者へのエールを一球に込めた。

 球児たちのあこがれのマウンドに立ち、震える足で、それぞれの位置に就いた。投手が吉田さん、捕手が嘉村さん。

 医療に関わる者の代表、そして昨年のコロナ禍で無念をのんだ球児の代表として立っているんだ…。そのプレッシャーに、吉田さんは緊張で周りが何も見えなくなった。ただ、正面のミットが目に入って思った。

 「相手が嘉村で良かった」。中高の6年間、ともに汗を流した。県内屈指の進学校で同級生のほとんどが2年の秋に部活動を引退する中、野球部員は3年に入っても練習を続けてきた。

 互いに目を合わせ、軽く深呼吸をしてうなずく。始球式のアナウンスが響く。

 昨年5月、主将だった吉田さんは監督に大会の中止を告げられた。やむなく引退し、受験勉強に気持ちを切り替えたが、「どうしても『やりきった』という感覚にはなれなかった」

 医療を志したのは、野球で腰を痛めた際、親身になって支えてくれた整形外科医に将来を重ねたからだ。

 一方で嘉村さんは2年生まで進路に悩んでいたが、コロナ禍で働く医療従事者たちを知って心を決めた。「大変な時に、人の役に立つ職に就きたいと思った」

 日差しがまぶしい。嘉村さんは中腰になって構えると、静寂の中で吉田さんしか目に入らなくなった。

 2人は共に大学でも野球部に所属する中、7月下旬、始球式の依頼を受けた。「思った以上の大役を任された」。久しぶりに再会して練習を始め、後輩たちの試合を観戦すると、互いに同じことを言っていた。

 「やっぱり、高校野球っていいな」

 サイレンが鳴った。吉田さんが大きく振りかぶって投げた球は左にそれてバウンドしたが、嘉村さんが手を伸ばしてキャッチ。笑顔で吉田さんに駆け寄り、2人で一礼すると、関係者から拍手が湧き起こった。

 「緊張で体から力が抜けて…、あっという間に終わった。でも、この舞台に立てたことに感謝したい」と吉田さん。嘉村さんは「これで『やりきった』という感じになれた。選手たちは昨年悔しい思いをした先輩たちの分も、全力でプレーしてほしい」とエールを送った。(久保田麻依子、村上貴浩)

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