市西宮の捕手、阪下颯那(せな)にはどうしても対戦したい相手がいた。東洋大姫路の阪下漣。世代屈指の好投手だからではない。いとこで中学まで近所で育ち、高校最後の夏はグラウンドで再会しようと約束していた。 漣は名門校で1年から1番を背負い、2年秋に近畿大会優勝、明治神宮大会4強に導いた。全国区の存在となり、誇らしく思うと同時に「あいつに勝たないと甲子園には行けない」と燃えた。 2年春からスタメンマスクを勝ち取り、秋には仲間に推されて主将に。涼しげにマウンドに立つ漣とは好対照に、気持ちを前面に出し、力強くチームを引っ張った。 漣が今春の選抜大会中にけがをすると、自らの経験から「焦るなよ」と伝えた。「まじ頑張って」と激励されて迎えた今夏。初戦の2回戦を快勝し、16日の東播磨戦でも盗塁を刺すなど奮闘したが敗れた。「漣がいなかったらこんなに熱中できなかった」。約束は果たせずとも、充実の表情がそこにあった。(初鹿野俊、山本 晃)【高校野球特集ページ】こちら【選手名鑑ページ】こちら