まだそんなに親しくない人と会話をしていると、在日コリアンの私を気づかってか、韓国ドラマについて話をふられることが多い。2000年代初め、「冬のソナタ」がブームだったころはほぼ女性だったが、「宮廷女官チャングムの誓い」以降、男性も多くなった。その中の一人に部落史研究者の朝治(あさじ)武さんがいる。何かの席でご一緒したとき「高さん、チャングムの誓い、おもしろいね」と声をかけられた。自慢じゃないが私は全54話からなるこのドラマを、わずか3日で見終えているので、嬉々(きき)として話に応じ、やや上から目線でオススメのドラマをいくつか紹介したのだが、あっという間に形勢は逆転。朝治さんは日本で見ることができる韓国歴史ドラマのほぼ全作品を観(み)尽くし、『韓国歴史ドラマの再発見』(2019年/解放出版社)という本まで出してしまった。
部落史研究者の朝治さんが韓国歴史ドラマに強く惹(ひ)かれていったのは、ひとえに、厳しい身分制度が克明に描かれているからだ。目をそむけたくなるほどの残酷な暴力、心理的な迫害など、差別の理不尽さをあからさまに描くことで、不条理な人間ドラマが際立ってくる。とくに食肉や皮革産業を担った「白丁(ペクチョン)」と呼ばれた被差別民への差別は、胸を締め付け、共感する部分もあっただろう。
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