仙台市在住の作家が、縁あって兵庫県の皆さんに随想を届けることになった。さて、神戸というとやはり思い出されるのが、28年前の阪神淡路大震災である。仙台もまた、東日本大震災の被災地として12年の歳月を経た。その復旧の過程では、ボランティア元年という言葉も生まれた阪神大震災の経験にずいぶんと学ぶことが多かったと聞いている。
私も、震災後に何度か神戸へと足を運ぶことがあり、今でも記憶に強く刻まれているのが、長田区の大正筋商店街を歩いていて目にした一本の電柱である。震災前には、戦前から続く木造の商店街だったというそこは、震災直後に起きた火災によって、大半の店が焼けたと聞いた。私が2015年1月に訪れたときには、店と店がデッキで結ばれた商店街が再建されて高層マンションも立ち並び、光景はすっかり様変わりしていた。建物や街並みには本来、人の暮らし方があらわれるものだ。しかし、そこはどこか抽象的な印象があり、現在から振り返ると、その後、続々と大型店舗が進出した全国の都市の郊外に共通した街並みを先取りしていたように感じられる。
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