おしゃべり会のためにつくった息子の成長記録と、自己紹介カード
おしゃべり会のためにつくった息子の成長記録と、自己紹介カード

息子を予定日より3カ月早く、582グラムで産んで、もうすぐ15年。
「小さく生まれた子」のママたちとのおしゃべり会を10月、初めて開きました。
恐る恐る開いてみた会は、予想外のひとときになりました。

きっかけは、知人を通しての低出生体重児ママたちとの出会い。0歳と2歳のお子さんの保育所入所について、話を聞いてもらえないか…という依頼でした。
わたしでお役に立つかなぁと、少し緊張して向かったものの、子どもの年齢は違えど乗り越えてきた山はおなじ。
壮絶な出産の経験、NICU入院時の苦しみとモヤモヤ、周りの人に言われて悲しかったこと、今後の成長の不安…3人で3時間、夢中でマシンガントークをしたのでした。

障害のある子も、ない子も、その子らしく一緒に過ごせる学校園・地域をつくろうと、「どんな子も暮らしやすい西宮を考える会」というグループを2017年から運営しています。小さく生まれた子や家族にも何かしたいなぁとも思いながら、まったくできなかったのは、わたし自身、同じようなママたちとのつながりがほぼなかったから。

2023年1月~24年6月に連載した「『手のひらサイズ』で生まれたきみと」に書いたように、息子はNICUでの治療が非常に難航して、「長くて半年」と言われた入院期間は1年4カ月に。退院する時点でまだ、生後3カ月ほどの体重と発達でした。同じように「小さく生まれた子」が集う場に行けば、比べてしまって逆に傷つく気がして、怖かったのです。

その後、知的障害や身体障害、自閉症スペクトラムと診断。息子と毎日一緒にいるわたしは「障害イコール不幸、ではない」と少しずつ実感していったものの、早産したばかりのママたちが「障害」の二文字を聞いたら絶望してしまうのでは…と、おいそれとつながれずにいました。

それでも、夢中で話した3時間を思い出すと、つながること、分かち合うことの大切さが身に染みて(なんと、「手のひらサイズ」の連載を読んでくれていたママもいて、びっくり!)、10月29日に開催が決まっていた「のんびりひろば」という集い場の中で、おしゃべり会を同時開催することにしました。ゲストは、神戸市でNICU入院経験のある子と家族を支援している「つなぐのめ」の河野麻衣子さんと、西宮市の子育てコンシェルジュさん。

あのころのわたしのように、参加まではできない人も多いかもしれない。でも、身近に同じような経験をした人がいると知って、いつか必要なときに頼ってほしい。チラシ配布に多くの友人、知人が協力してくれて、息子が生まれた病院やNICUにも置いてもらえることになり、定員5名はすぐに満席に。ほとんどは産後半年ほどのママでした。

思い立ったが吉日!で動き始めたものの、産後半年の心身ともにボロボロだった自分を思い返し、出産からまだ日の浅い人たちをさらに傷つけてしまわないだろうか…と、日に日に心配が募ります。

申し込みフォームには、わが家の14歳の息子が「どう成長したのか教えてほしい」という質問も。どんな風に伝えよう…と悩みつつ、幼稚園や学校生活を生き生きと楽しむ息子の姿を知ってもらえたらと、写真で成長記録をつくりました。

ちょっとでも話しやすくなるよう「自己紹介カード」もつくり、話のきっかけに「好きな食べ物」も言ってもらうことに。
ときどきみんなで大笑いしながら、入院中に感じたこと、発達の悩みや通っているリハビリ、入園入学の心配など、たくさんの思いと情報を共有できました。

「同じ経験をしたこと」が、人に伴走する必須条件だとは思わないものの、あのころの悲しみやつらい思い出も、驚くほど安心して話すことができた90分。
15年たっても心の奥で固まっていたものがほどけていくような、同じ経験をしたこの人たちとしか癒やせないものがあったのだと、実感もしました。

早産する前の日に戻ることも、息子の障害をなかったことにもできない。
けれど、痛みを抱えながら、人との出会いでこうやって生きていくんだなぁと、忘れられない一日になりました。

▽萩原 真(はぎわら まこと)
【降っても晴れても すきっぷびより】は、すきっぷスタッフで元記者の萩原が、3人育児のドタバタや障害のある息子との生活で感じたこと、うれしいことから尽きない悩みまで本音満載でお届けします。