高校関連のチラシ。中3のこの時期は、学校でも毎日たくさん配られます。
高校関連のチラシ。中3のこの時期は、学校でも毎日たくさん配られます。

中3長男、高校進学の壁に直面中。今回は、高校探しのリアルな実情をお伝えします。

約500グラムで生まれ、知的障害や肢体不自由などがある息子。「進路問題、たいへんだよ~」と、まわりのママたちからよく聞いていたため、中学2年の夏ごろから高校の見学や説明会などに行き始めました。

現在大学1年の娘のときは、中学生らに向けた「オープンハイスクール」に初めて参加したのが中3の夏休み。3校ほど見て回って、志望校を決定…という感じだったのに、すでに20回以上は参加している、今回の高校進学活動。略して「コーカツ」(響きがよくない…)。幼稚園や小中の進学時同様、こうして必死に動かねば道が開けないのだと、悲しくなります。

では、「前編」でざっくりわけた学校種別ごとに、コーカツ歴を見ていきたいと思います!

【1】公立高校
「内申点」と当日のテスト点=5:5で判定する、兵庫県。息子は定員割れの高校をねらうしかなく、わが家の「第2学区」で通学圏内にあり、例年定員割れしている公立高と言えば、夜間定時制や多部制の3部という「夜の学校」だけ。

15歳の子の活動時間が夜というのも、健康や成長にどう影響するかなぁ…と思うのと、悩ましいのは、日中の過ごしかた。
息子を出産後、新聞記者の仕事を手放し、一時は療育や通院に専念。14年たち、こうしてライター業をしつつ子どもの小学校の地域学校協働推進員やPTA役員を務めたり、市の審議会に出たり、自分の人生を取り戻しつつありました。が、来年から再度、すべて手放して、毎日息子と2人で過ごさねばならないのかと思うと…。
まわりの同じような家庭も、お母さんが仕事を辞める覚悟だといいます。

もうひとつ誤算だったのは、定時制のオープンハイスクール。一般的な高校は7~10月ごろが中心ですが、定時制はどこも「11月と1月」。「入試の合理的配慮」の話し合いのため、早めに志望校を決めねばならないのに、10月現在、実際の学校の様子をまだ見に行けていないのです。2年生のうちに行っておけばよかった…!と、後悔しきり。

入試の合理的配慮とは、解答用紙の拡大や問題文の読み上げ、別室での受検など、障害のある子への特別措置のこと。どんなものが認められるのか、事例が分かりやすく公表されているわけではなく、「志望校を決めてから、中学と高校の校長が話し合う」という手順。さらに、具体的な特別措置が決まるのは、出願のあと。多くの人が「合理的配慮が認められるかどうかで、志望校を決めたいのに…」と、「卵が先か、ニワトリが先か」状態で悩まされるのです。

さらにたいへんなのは、「入ったあと」。制度も理解も十分とは言えず、おととい参加したオープンハイスクールでも、教頭先生から「お母さん、苦労しますよ」と断言されました。

【2】私立高校
カリキュラムや受講形態、制服や校則が柔軟な「通学もできる通信制高校」が増えており、今や10人に1人は通信制に通うとか。
ネックはやはり、学費。見学したある私立高校は年間120万円ほどかかり、来年度から高校無償化が拡充されて年に45万7千円の補助が出るようですが、それを差し引いても75万、3年で225万。む、無理…!

【3】高等専修学校
中学時代、不登校だった子などの進学先としても最近注目されている、高等専修学校。少人数クラスやサポートの手厚さなどが売りですが、「ローマ字が書けてパソコンのタイピングができる」「立ち歩く子はお断り」などの条件も。予備校のような感じでビルの中に入っていることも多く、体育は座学だったり部活がなかったり、「一番好きな教科、体育!」「部活をやるために高校に行く」という息子には、合わない面もありました。

私立高校同様、学費の高さが難点で、電車を乗り継いで通うのが難しい息子には、通学の支援も必要。迷っている間に人気の学校は早々と埋まってしまい、神戸市内のある専修学校は、9月時点ですでに来年度の生徒募集を終了したそう。

【4】特別支援学校高等部
支援学校に進むなら、「説明会、見学会、体験入学」の3日間参加するのが必須…と知ったのは、5月の説明会が終わったあと。日程などはホームページでは公開されず、中学校を通して連絡が来るそうですが、支援学級籍ではない息子には情報が届かなかったのです。
特別に機会をもうけてもらい、その後もオープンスクールなどに参加。授業は手先を使った作業が多く、こまかい手仕事が苦手な息子は希望しないと言います。
さらに、支援学校=障害のある子はみんな入れる…というわけではなく、「支援学校の東大」という異名をとる難関校も県内にはあるのです。

「どこを選んでも、いばらの道」。
1年4カ月のコーカツで見えてきたのは、そんな未来でした。

前編でも触れた通り、ほかの国では義務教育期間がもっと長かったり、入試なく地域の高校に入れたり、15歳で競争と選別にさらされ分断されるのが「当たり前」、ではない。兵庫県は少子化を理由に県立高校の統廃合を進め、娘が通っていた高校も2027年3月で廃校になりますが、こぼれ落ちる子が多数いながら受け皿となるはずの公教育を削っていくとは、なんともいびつな状況だと感じます。

とにかくやってみる、そこでダメでも人生終わりではない!と自分に言い聞かせつつ、「来年からは高校生や~」と張り切る息子と一緒に、少しでもベターな道をと、もがいています。

▽萩原 真(はぎわら まこと)

【前編はこちら】

【降っても晴れても すきっぷびより】は、すきっぷスタッフで元記者の萩原が、3人育児のドタバタや障害のある息子との生活で感じたこと、うれしいことから尽きない悩みまで本音満載でお届けします。