8月に尼崎市であった記録会で1500m走る息子
8月に尼崎市であった記録会で1500m走る息子

長男、中学3年生。卒業後の進路に、毎日胃が痛くなるほど悩んでいます…!

582グラムで生まれ、知的障害や肢体不自由のある彼。本人が、友だちが大好き!というのと、「いろんな子が『違い』を大切にともに過ごす環境が、どの子にとっても必要だ」という親の実感から、小学1年生からずっと、普通学級で過ごしています。
山あり谷ありの義務教育9年間も、あっという間にもうすぐ終了。

息子の一番の願いは、「高校でも部活をやりたい」(中学では陸上部に所属、8月には記録会で1500m走り切りました!)、そして、「友だちとワイワイ楽しく過ごしたい」。
つまり、「普通に」高校生になってDK(男子高校生)ライフを「普通に」楽しみたい、なのですが、今や多くの子が当たり前に歩む「普通の道」も、障害のある子どもにとっては、非常に難しい。

昨年の娘の大学入試と比べても、「高校進学ってもはや、大学より厳しくてガチガチなのでは!?」とまで思う毎日です。

中3の子たちの進学先は、めちゃくちゃざっくり分けると以下の4つ。
・公立高校
・私立高校
・高等専修学校
・特別支援学校高等部

高校はさらに、昼間に通う「全日制」、午前・午後・夜の3つの部がある「多部制」、主に夜間の「定時制」、通信制や単位制などの学校もあります。

ちょっとややこしい話になりますが、多くの子が受ける兵庫県の公立高校の3月入試(学力検査)は、調査書(内申書)に書かれた内容と、中3の成績をもとにした「内申点」:当日のテスト点を5:5にした点数で判定します。「内申点5割」は全国的に見ても高く、「当日のテストの点だけで子どもたちを評価しない」ために始まった、「兵庫方式」とも呼ばれる入試です。

ちまたでよく言われる、「支援学級籍だと公立高校に行けない」というのは間違いで、支援級籍でも内申点はつけられるし、入試ももちろん受けられるのですが、息子のように「みんなと同じ定期テスト」ではまったく点がとれず、成績(中3の2学期の評定)はほぼすべて「1」という子は、(学区にもよるけれど)公立高校への道は実質断たれている…という状態。

で、この「高校入試がシビア」というのは、息子の中学入学前から感じていました。「内申」を気にして先生の顔色をうかがい、定期テストの点数や評価にきゅうきゅうとする子どもたち。「入試の材料になるから」、つまり、競争で不公平になるからと、小学校では提供されていたテストの合理的配慮や支援が中学ではなくなった子も、多くいます。

「(多様な子がともに学ぶ)インクルーシブ教育は、中学では無理」「中学校は変わりませんよ。高校入試がありますからね」。
ある校長先生の一言をきっかけに、わたしが代表を務める「どんな子も暮らしやすい西宮を考える会」で2023年秋、「どう思いますか?ひょうごの高校入試」というWebアンケートを実施しました。

「合理的配慮や支援を増やして、障害のある子も合格させて!」という趣旨ではなく、すべての子にとって、「学校ってなんのためにあるの?」を考えるきっかけになれば、というのが一番の目的。海外では高校入試自体、ない国が多いそう。なのに日本の13~15歳は、今しかない青春が入試に染まる…。それでいいのかな?と疑問を抱いたのです。

中高生や保護者さん、学校の先生などから232件の回答があり、熱のこもった意見ばかりで驚きました。
・「テストが内申点に影響するので、大きなプレッシャーを感じる」など、入試が中学校生活に「悪い影響を及ぼす」との回答が圧倒的に多かった。
・高校入試をどう見直せばいいと思うか聞いた設問では、「高校も義務教育にする」が最多。
・内申書や評価方法への不安と誤解が根強いことが分かった。

中学校生活に対し、「いじめが多い」(中学生)、「生徒も先生も疲弊しきっている」(中学生の保護者)といった自由記述も。「子どもたちのため」に始まった入試方式が、今や逆に作用していると言えるものの、「では、当日の点数の割合を上げればよい」という問題でもなく、まずはいろんな人が話し合う必要があるのではと、あらためて感じています。

結果と「4つの提案」を兵庫県と西宮市の教育委員会に提出し、今年2月7日付の神戸新聞にも取り上げてもらいました。
高校入試「内申点」が重圧に 西宮の市民団体がアンケート 障害ある生徒の高校選びの難しさも浮かび上がる

こうして入試や高校について考えてきたわけですが、息子自身がついに「受験生」となり、壁の前で右往左往の真っ最中。昨年から20回はオープンハイスクールやら体験入学やらに参加し、そのたびに打ちのめされ、「“入試の合理的配慮”って?」「家族の危機?」「どこを選んでもいばらの道なのか…!?」と迷走するわが家の苦闘ぶりについては、後編でお伝えします~!

▽萩原 真(はぎわら まこと)

【降っても晴れても すきっぷびより】は、すきっぷスタッフで元記者の萩原が、3人育児のドタバタや障害のある息子との生活で感じたこと、うれしいことから尽きない悩みまで本音満載でお届けします。