自分もまわりの人も大切にできるよう、性教育が大事だと聞くけれど、いつから、どんな風に始めたら…そうお悩みのママ、パパにぜひ知ってほしいのが、「絵本で性教育」です。
子どもたちに分かりやすく、やわらかく、「からだ」や「性」について伝える本が続々登場し、兵庫県内では健診会場に性教育絵本を置く試みもスタート。年代別のおすすめ絵本も紹介します!
西宮市で小学4年生の双子を育てる川崎あゆみさん(43)は、子どもへの暴力を防ぐ「CAP(キャップ)」メンバーとして活動しながら、約5年前から性教育にも取り組み、絵本を子育てひろばなどに持参する活動もスタート。自宅には約150冊の関連本が並び、うち約40冊が子ども向け。図書館や男女共同参画センターにも日々足を運び、さまざまな絵本に触れているそう。
「からだに何が起きるかを、小さいころから知っておくのが大切」と言う川崎さんに、年代別のおすすめ性教育絵本を聞きました!
【0~2歳】「あっ!そうなんだ!わたしのからだ 幼児に語る性と生」
(著: 中野 久恵 星野 恵/絵: 勝部 真規子/エイデル研究所)
わが家の子どもたちも大好きな「あっ!そうなんだ」シリーズの第2弾。第1弾はより踏み込んだ内容でしたが、こちらは「低年齢の子にも読み聞かせしやすい」と、川崎さん。性教育の基礎が詰まり、「最初の1冊」にピッタリ。
【3~5歳】「アイラブみー じぶんをたいせつにするえほん」
(絵:オバック/文:たけむらたけし/新潮社)
NHK・Eテレの人気番組が絵本に。「なんでパンツをはいているんだろう?」など、素朴な疑問を抱く5歳のみーと一緒に、心とからだを大切にするとは?を学びます。かわいい絵柄で、川崎さんも「子どもが楽しんで見たがる」と言います。
【小学生~】「こどもせいきょういくはじめます」
(著:フクチマミ、村瀬幸浩、北山ひと美/KADOKAWA)
ベストセラーとなった「おうち性教育 はじめます」シリーズ第3弾は、「小学校低学年から自分で読める本がほしい!」という声にこたえて登場。性教育に取り組む小学校の協力を得ただけあり、たとえば「プライベートパーツ」について教えたとき、「目のほうが大事じゃない?」と言われたときにどう答えるか…など、子どもたちの感じ方や疑問を知り尽くした、「かゆいところに手が届く(川崎さん・談)」本だそう。
上記の3冊をはじめ、いま世界で広がる性教育は、「包括的性教育」と言われるもの。赤ちゃんができる仕組みだけでなく、ジェンダー平等や性の多様性、互いの意思を確認する「性的同意」など、「自分とほかの人の、心もからだも生き方も大切にしよう!」を広く学ぶ、人権教育です。
とは言え絵本の世界では、「エプロン姿のお母さんと、スーツ姿のお父さん」「お人形が好きでおとなしい女の子と、車好きのやんちゃな男の子」のように、まだまだ性別で役割が固定されがち。川崎さんいわく、「パパ」が取り上げられる絵本が増えているものの、「強さ」や「有能さ」を強調していたり、子どもと触れ合うけれど家事はしていなかったり…というものも多いそう。
そんな中で川崎さんが勧めるのは、「せかいでさいしょにズボンをはいた女の子」(作: キース ネグレー/訳: 石井 睦美/光村教育図書)。
主人公メアリーのモデルは、約150年前、女性初の軍医として活動した実在の人物。女の子が窮屈なドレスしか着られなかった時代、ズボンを履いてまちに出ると、周囲からは非難の嵐。一度は心が折れかけるも、「わたしはわたしのふくをきている!」と、勇気を出して教室に入ると、まさかの光景が…。自分を貫くことで社会が変わり、周囲の人も生きやすくなる。目の前が開けて、背中を押されるような一冊です。
「絵本で性教育」は、公共の場にも広がっています。
西宮市は4月から、乳幼児健診の会場に性教育絵本を設置。厚生労働省の2021年度研究事業で作成された手引き「乳幼児期の性に関する情報提供」を参考に、「だいじ だいじ どーこだ?」(作:遠見 才希子/絵:川原 瑞丸/大泉書店)など3冊を選びました。
同市の塩瀬公民館で7月半ばにおこなわれた3歳児健診では、4~5歳児や小学校低学年向けの本も合わせ、5冊を展示。診察や計測の合間に手に取ってもらおうと、プライベートゾーンの説明を盛り込んだ絵本紹介パネルも新設しました。保護者からは、「こんなに小さいうちから、性について伝えてもいいんですね」と、驚きをまじえた反応があるそう。
わが家でも10年ほど前から、リビングの絵本棚に性教育絵本を数冊、置いています。子どもたちが「読んで」と持ってくるので、自然に大事な話ができて、とってもありがたい。読み聞かせながら、「目からウロコ」の連続だったり、性に関する単語を口に出すとき内心ドキドキしたり…。大人である自分がいかに性教育を受けてこなかったか、痛感します。「その人のからだはその人のもの、という『からだの権利』を、まずは親が学ぶのが大事」と、川崎さん。
ちなみに筆者お気に入りの絵本は、知的障害のある中学生の息子にも分かりやすかった「うみとりくの からだのはなし」(作:遠見 才希子/絵:佐々木 一澄/童心社)。手のひらサイズの「じぶんをいきるためのるーる」(作:ippo/解放出版社)は、「自分は自分でいい」と思い出させてくれる、プレゼントにもおすすめの絵本です。
大人にもやさしく、「性と人権」を教えてくれる絵本。その豊かな世界を味わいながら、子どもたちと一緒に学んでいきたいと思っています。
(すきっぷスタッフ 萩原 真)