2025年11月18日に起きた大分県大分市佐賀関の大規模火災から4ヶ月余りが経った。現地では焼けた建物の解体作業が行われ、復興の槌音が響いているが、発災直後、「同伴避難所」をいち早く立ち上げ、ペットと暮らす住民や地域猫への支援(一時預かりや物資配布など)を行った施設がある。
火災現場から車で10分ほどの場所にあるアニマルシェルター「RIRIMAM(リリマム)の樹」(大分市志生木、代表・木田理沙さん)だ。地区の犬4頭、猫24匹を一時預かりし、うち地域猫4匹は新たな飼い主さんを見つけて譲渡に繋げた。木田さんに当時の状況などについて聞いた。
「RIRIMAMの樹」は、道の駅「さがのせき」からほど近い国道197号線沿いにある。個人で犬の保護活動をしていた代表の木田さんが2024年4月にオープン。以来、保護犬猫を安心できる環境で預かり、譲渡を通じて幸せな未来に繋げる活動をしてきた。この2年間で犬80頭、猫220匹を、新しい飼い主さんと結びつけてきたという。
11月18日夕方、木田さんが仕事を終えて帰ろうとすると、たくさんの消防車が目の前を通り過ぎていった。佐賀関が火事だと聞き、友人の安否確認など情報収集に追われた。
「ふだんから犬猫の保護活動をしている身として、まず気になったのは、ペットを飼っている人たちや、地区で暮らす地域猫たちでした。東日本大震災のときもそうでしたが、災害が起きるとペットの同伴避難所がなかなか用意されず、困っていた被災者の方々を報道で知っていたので、施設のメンバーらで相談して、ここをペット同伴避難所にしようと決め、翌19日から受け入れを始めました」(木田さん)
SNSで物資の支援などを呼びかけたところ、翌日以降、大規模火災のことを知った全国の人たちから、ケージ、ペットフード、シート、衣服、カイロ、生活必需品などたくさんの支援物資が届いた。木田さんらはSNSだけでなく、住民たちが避難している場所に直接出向き、「ペットで困っている人がいたら施設にきてください」と伝えて回った。
地区で暮らしている地域猫たちのことも気掛かりだった。「猫たちはちゃんと逃げられただろうか…」。火災前、地域猫たちは地区住民の大野富子さんとデザイナーの橋本康聖さんが2人で約40匹(避妊、去勢手術済み)の面倒をみていた。
自宅内で飼い猫や預かり猫など7匹を世話していた橋本さんは、火災発生後、すぐに7匹をキャリーケースや木の箱などに入れ、車で避難した。
火は橋本さん宅のすぐ近くまで迫ったが、なんとか延焼をのがれ、自宅は無事に残った。しかし、すぐには戻れない。「猫たちは動揺していて、なかなか用を足さず、この子たちをどうしようと思いながら車の中で不安な一夜を過ごしました」(橋本さん)
そんなとき知人から聞いたのが「RIRIMAMの樹」だった。翌19日、すがる思いで橋本さんは7匹の猫を連れて同施設を訪れた。そして、落ち着くまでの間、預かってもらうことができた。
一方、大野さんの自宅は全焼した。火事が起きたとき、大野さんは飼い犬2頭をキャリーケースに入れて避難。その後、犬たちを昼間だけ同施設に預けた。「家が全焼してしまいバタバタだったので、仮住まいの環境が整うまで預かってくれたのは本当にありがたかったです」と振り返る。
その後、橋本さんと大野さんは、県の動物愛護センター職員らと協力し、捕獲器をしかけるなどして、火災前から世話していた地域猫たちを探してまわった。「猫たちは危険を察知して安全な場所へ逃げていた」と大野さん。お腹をすかせ、捕獲器に入った子たちが10数匹いた。人慣れしていて捕まえられる子は捕まえた。そして、猫を保護するたびに橋本さんは車で同施設へと連れていった。当時消息がわからなかった3匹以外、猫たちはみな無事だった。
同施設では、2階の大部屋と小部屋を開放。獣医師会の人たちやボランティアが駆けつけ、運びこまれた地域猫たちの体調が悪くないかなど、健康状態を無料で診た。
「中には、すすだらけ、びしょ濡れ、ドロドロに汚れた子、風邪をひいていた子もいました。煙の匂いがしばらくとれなかったですね。橋本さんが猫を運んでくるたび、奇跡だと思いましたね。あんなにすごく燃えて、鎮火までだいぶ時間がかったなかで、けがも火傷もせず、ここにたどり着いたんですから」
同施設には、橋本さん、大野さん、愛護センターの職員さん、獣医師会の人たちをはじめ、県内外から個人、団体を問わずたくさんのボランティアが駆けつけ、支援の拠点となった。
「おかげで困難なときを乗り越えることができました。手伝ってくださった方には本当に感謝しています」(木田さん)
地域猫たちは一時預かりの後、橋本さんらが元の場所に戻した。大野さん宅に出入りしていた4匹の長毛猫たちは、木田さんが里親を探し、新しい家族のもとで幸せに暮らしている。
現場近くで飼い犬を連れて車中泊していた男性、家族で高齢の猫とともにここで過ごした家族などもいた。
「その猫は18歳の高齢猫だったので、ちゃんとご飯を食べているかなど、スタッフがみんなで代わるがわるケアしました。今年2月、その子は老衰で亡くなりましたが、火事のときでも片時も離れることなく、ここで愛猫と家族が一緒に過ごせたことは、とてもよかったと思います」
木田さんはいま、今回の体験をまとめた冊子を作成中だ。「地域猫の世話をされている大野さん、橋本さんに協力いただき、私たちが実際に経験したことを時系列でリアルに想像できるよう、記録として残しておきたいと思っています。いざというときこんなことやものが役に立ったとか、犬猫の避難でどんな課題があったかなどをまとめ、全国の犬猫の防災に役立てられれば」と木田さんは話している。
(まいどなニュース特約・西松 宏)























