齋藤畸庵「仙山楼閣」
齋藤畸庵「仙山楼閣」

■日本絵画が専門 山口奈々絵学芸員

 岩肌があらわになった険しい山中に楼閣が築かれ、渓流に沿って回廊がめぐらされた雄大な景色。この絵は、城崎生まれの文人画家・齋藤畸庵(さいとうきあん)(1805~83年)の作品「仙山楼閣」です。畸庵は山水画を得意とし、79年の生涯を終えるまで、穏やかな理想郷を描き続けました。

 絵を描く際にはぶつぶつと漢詩をつぶやいていたと伝わりますが、それは詩と画が一体となった芸術を目指した彼らしい逸話といえるでしょう。今回は、この作品に込められた思いを読み解きます。