経済小説の迫真 同時代の光と影
<経済小説の迫真 同時代の光と影>(3)黒木亮著「島のエアライン」 小さな自治体が夢に挑んだ記録
ロンドンを拠点に精力的に作品を刊行する黒木亮。「トップ・レフト」「アジアの隼」「巨大投資銀行」「赤い三日月」「カラ売り屋」といった国際金融小説の書き手として名を成したが、本作のテーマは熊本・天草の第三セクターの地域航空会社「天草エアライン」である。約30に上る黒木作品のラインアップでは異色に映るが、なぜ天草エアラインなのだろう。
黒木は取材で福岡-天草間を往復した際、雲仙岳の雄大な姿、青い有明海に浮かぶ島々の光景に感動したという。東シナ海、有明海、八代海という三つの海に囲まれた天草。就航は地元の長年の悲願だった。「空港を造るところから始め、10年以上の歳月を費やして膨大な準備を重ね、2000年に就航させた。小さな自治体の執念の物語を書いてみたかった」。天草-福岡、天草-熊本、熊本-大阪。朝の7時台から夜8時ごろまで1日10便、これを1機で運航している。「たった1機とはいえ、飛行機は天草にとって夢と希望の象徴なのです」
この記事は会員限定です。新聞購読者は会員登録だけで続きをお読みいただけます。