経済小説の迫真 同時代の光と影
<経済小説の迫真 同時代の光と影>(4)宮部みゆき著「火車」 多重債務者の凄惨な人生
一気に読める。引き込まれる。そして怖い。底の見えない闇の淵が現代社会の思いも寄らない所で口を開けていることがわかる。
休職中の刑事、本間俊介が遠縁の男性に頼まれて彼の婚約者の関根彰子(しょうこ)という女性の行方を捜す。失踪の手がかりを探そうと過去の勤務先や育った町などに足を運ぶ中で、「関根彰子」はすでにこの世になく、借金取りに執拗(しつよう)に追われた新城喬子(しんじょうきょうこ)が彼女になりすましていた驚愕(きょうがく)の事実に行き着く。自らの意志で徹底的に足取りを消してきた喬子の人生。浮かびあがってきたのはクレジットカード社会の犠牲というべき自己破産者の凄惨(せいさん)な人生だった。
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